渋谷を拠点とする東急電鉄とサイバーエージェント(CA)、ディー・エヌ・エー(DeNA)、GMOインターネット(GMO)、ミクシィのIT大手企業4社、渋谷区教育委員会が6月17日、小・中学生の「プログラム教育事業に関する協定」を締結した。
IT技術の進化に伴いIT人材不足がいわれている中、小・中学校でプログラミング教育の必修化が決まった。指導方法や教育、塩津院不足など課題もある中、区内のプログラミング教育の充実を図ることで、「次世代に必要な資質・能力を持った人材を渋谷から輩出する」ことを目的に協定を締結。かつて米ITベンチャーの一大拠点「シリコンバレー」になぞらえ「シブヤ・ビットバレー」と呼ばれていた渋谷は近年、再びIT企業が集積するエリアとなりつつある。そのリソースを生かし、東急電鉄が「街づくり」の一環として1年半ほど前から各社に声を掛けていたという。
渋谷は教育委員会が独自のICT教育システムを2017年9月から推進しており、区立小学校(18校)と中学校(8校)の生徒約8500人(2019年5月1日現在)に1人1台のセルラータブレットを貸与するなどしている。
一方、IT企業各社は昨年「シブヤ・ビットバレー」の再興を目指した取り組みを始めたほか、プログラミング教育アプリの開発や講師派遣などに取り組んでいる。東急電鉄が全体の調整を行い一連の取り組みを一体的に体系化し発信を図ることで「日本全体のプログラミング教育をけん引」したい考え。
協定締結に伴い、「Kids VALLEY未来の学びプロジェクト」も始動。教育委員会(=教育現場)と連携し、DeNA=小学生低学年(1~3年)、CA・GMO=小学生高学年、mixi=中学生向けのカリキュラムを開発するほか、教員向けの指導カリキュラムの開発など教員の研修、授業への講師・サポート役として参加するなど授業支援などを行う。開発したカリキュラムはそれぞれ必修化される2020年度(=小学校)、2021年度(=中学校)に導入を目指す。同プロジェクトの一環として、8月には4社それぞれが区内在住・通学の小・中学生を対象にしたプログラミング体験や仕事の紹介、社内見学を行う予定。
DeNAとCAはタブレットやパソコンを使った「ビジュアルプログラミング」を中心としたカリキュラムを提供。区と包括連携協定「シブヤ・ソーシャル・アクション・パートナー協定(通称S-SAP)」を結んでいるDeNAは、2017(平成29)年から区が小学生に配布しているタブレットにプログラミング教育アプリ「プログラミングゼミ」を搭載しているほか、これまで区内の小学校8校でプログラミングの授業を行っている。カリキュラム用にはアプリ内のバリエーションを増やす予定。
CAは2013(平成25)年に小学生向けプログラミング教育事業会社となる子会社CA Tech Kidsを設立し、2017年に教育委員会との連携し区立代々木山谷小学校でプログラミング授業を行った経験もある。子ども向けプログラミング学習ソフト「Scratch」を活用した授業の開催を予定しているが、エンジニアが実際に使っているプログラミング言語を教えることから「極めて実践に近い教育をやるつもり」(藤田晋社長)。
ミクシィは中高生向けに実施している企業訪問受け入れプログラム「XFLAGアカデミー」で、スマホRPG「モンスターストライク」のキャラクターを使ったゲーム開発などを行っている。それらの経験を生かしたカリキュラム開発や教材提供、プログラミングに関する啓発活動を行っていく。GMOは新卒社員向けに実施しているIT教育プログラムを小学生向けにアレンジするほか、プログラミング・ロボット教室の情報を紹介するポータルサイト「コエテコ」で情報発信も行う。会長兼社長・グループ代表の熊谷正寿さんは「ドメインやサーバー、SSLなどのセキュリティーなど見えないインフラに関わるテクノロジーの分野を伝えたい」と話す。
「渋谷から日本の未来の未来を育てるプロジェクト」と位置付ける東急電鉄。同社高橋和夫社長は「渋谷らしい多様性、創造性つながりといったキーワードを元に、官民連携、企業間連携ということで次世代の人材育成を新しい取り組みの中でやっていきたい。渋谷の地から世界で活躍できる人材が切れ目なく次々に輩出されることを願って、ソフト・ハードの両面でサポートしていきたい」と意欲を見せる。