白根記念渋谷区郷土博物館・文学館(渋谷区東4、TEL 03-3486-2791)で現在、東京オリンピックやハチ公、発掘出土資料など、昨年1年間に収集された新資料を紹介する「新収蔵資料展」が開催されている。総展示数は約200点。
「東京オリンピック開会式ハイライト」を収めた5色のソノシート
2020年の東京オリンピック開催を来年に控え、1964(昭和39)年大会当時の貴重な資料や記念品を数多く展示。「米軍ワシントンハイツ(現・代々木公園)は、当時渋谷区の8分の1の面積を占有し、まちの発展の妨げになっていた。オリンピックを契機に返還されたことは、渋谷にとって他の地域よりも特別な意味があった」と学芸委員の松井圭太さん。
渋谷区を走る聖火ランナーの写真を初展示するほか、実物の「聖火リレートーチ」も公開。当時区内の聖火リレーは目黒区から駒沢通りを走り、恵比寿駅を過ぎて明治通りに進み、港区に抜けるというコース。正走者1人、副走者2人、随走者20人の編成で、「渋谷橋郵便局前」でもう一人の正走者に引き継ぎ走った。「区は正走者2人のトーチを回収し、その後も保管していた」というトーチには聖火の黒いすすが残る。
同じく「東京オリンピック」コーナーには「当時選手村の食堂でコックをしていた鈴木勇さんが、仕事の傍ら撮影した」という選手村の風景や、食堂の雰囲気が伝わる貴重な写真を掲出。さらにオリンピック記念ワッペン、バッジ、たばこ、企業キャンペーンで作られたメダルや5色のソノシートなど、1964年大会に向けて用意された記念グッズを数多く展示している。
「ハチ公」関連の新収蔵コーナーでは、忠犬ハチ公が笑っているような表情で写る珍しい写真を初公開。ハチ公を飼っていた上野博士の松濤の家の一軒隣に住んでいた女性が所持していたもの。この写真の発見に伴い、「今まで完全に特定できていなかった上野博士の家が明らかになった」という。併せて、22歳の若さで亡くなった大正時代の写真家・渡部亀太郎が撮影した人物や東京の風景写真なども展示。「大正時代は関東大震災などで写真も失われ、残っている資料も少ない。今まで誰も知らなかった写真家だが、大正時代の風俗や服装、まちの風景を知る意味でも貴重」と資料価値の高さを評価する。
開館時間は11時~17時(入館は16時30分まで)。月曜休館。入館料は、一般=100円。3月24日まで。