明治神宮(渋谷区代々木神園町)原宿口鳥居前で3月5日、伝統芸能「文楽(人形浄瑠璃文楽)」舞台の組み立てが始まった。
今月9日~12日に行われる、日本財団、一般財団法人「にっぽん文学プロジェクト」が主催する「にっぽん文楽」プロジェクトの公演に向けたもの。同公演は、日本の伝統芸能である文楽の魅力を伝えることを目的に2015年から毎年、街なかに組み立て式の舞台を造り公演を行っている。
舞台は、幅19.7メートル(間口は10メートル)×高さ6.7メートル×奥行8メートル。舞台は、手前から奥まで「手すり」という板で仕切られているほか、人形を動かす「人形遣い」が立つ、表舞台から一段低くなっている「舟底」を作る。舞台上手は、語り手である「太夫(たゆう)」、三味線の人たちの舞台「太夫座(たゆうざ)」「囃子場(はやしば)」となる小部屋で、床には太夫と三味線が座る円盤状の「盆(文楽廻し)」を設置。中央はついたてで仕切り、物語の途中で演者が変わる時に盆を半回転させるようになっている。下手には、笛や太鼓などを演奏する人たちの空間もある。
柱や梁(はり)には吉野産ヒノキ材を使い、木を木で締める「込み栓」にはカシを使う。木材は10トントラック5台分になる。釘を使わない日本の伝統建築「木組み」工法を採用し、柱や梁は1本の木を、壁や床、屋根は事前に組み立てたパネルを組み合わせていく。屋根には「唐破風(からはふ)」を、舞台前面の下部には江戸時代に開設された人形浄瑠璃の代表的な劇場「竹本座」の座紋と、近松門左衛門の家紋を装飾する。
組み立ては九州や福井、東京から集まった大工20人が担当し、8時に作業を始め18時ごろまでに7~8割程度を組み立てた。翌5日8時に作業を再開し、午前中には完成する予定。寺や茶室など日本建築を専門に手掛けている建築家・田野倉徹也さんが設計。材料費や人件費など設営には約1億円をかけている。
文楽は、語り手である「太夫」、三味線、人形を動かす「人形遣い」が一体となった舞台。今回は、安珍清姫で知られる和歌山・道成寺の伝説を基にした「日高川入相花王(ざくら)」の四段目「渡し場の段」、同名の能を元にした景事物(舞踊の要素が強い小品)「小鍛冶(こかじ)」を公演する。
公演は全11回。有料席は完売しているが、立ち見ができる無料観賞スペースも用意する。小雨決行。公演に先立つ今月8日、原宿・竹下通りで人形・人形遣い、太夫、三味線も含めて「お練り」を予定している。