ロシアの小説家フョードル・ドストエフスキーの同名小説を基にした舞台「罪と罰」が1月9日から、Bunkamuraシアターコクーン(渋谷区道玄坂2)で上演される。
複合文化施設「Bunkamura」の開館30周年記念企画で、ロシア文化を多方面から紹介する「ロシアン・セレブレーション」の一環。「海外の才能と出合い、新たな視点で挑む演劇シリーズ」である「DISCOVER WORLD THEATRE」の第5弾となる。
物語の舞台は帝政ロシアの首都、サンクトペテルブルクの夏。頭脳明晰(めいせき)だが貧乏な青年ラスコリニコフは自身を「特別な人間」と位置付け、 「人類が救われ、その行為が必要ならば、法を犯す権利がある」と独自の犯罪理論を持っていた。ラスコーリニコフは質屋の老婆を殺害し奪った金で世の中のために善行をしようと企てるも、殺害現場に偶然居合わせた老婆の妹も殺してしまったことにより罪の意識や幻覚に苦しむことになる。そんな中、家族のために娼婦となったソーニャの生き方に心を打たれ、心を通わせていく――。
演出を手掛けるのは、英出身のフィリップ・ブリーンさん。日本では2015年に「地獄のオルフェウス」を、2017年に「欲望という名の電車」を演出している。今回の戯曲は、ブリーンさんが2016年に演劇学校「ロンドン・アカデミー・オブ・ミュージック・アンド・ドラマティック・アート(LAMDA)」に書き下ろしたものをベースに日本公演のために再構築したという。
主人公のラスコーリニコフを演じるのは三浦春馬さんで、ブリーンさん演出作への出演は「地獄のオルフェウス」に次ぐ2作目となる。ソーニャは3 年ぶり 3 度目の舞台出演となる大島優子さんが演じるほか、ソーニャの義理母カテリーナ役の麻実れいさん、主人公を追いつめる捜査官ポルフィーリ役の勝村政信さん、ラスコーリニコフの妹を演じる南沢奈央さんらが出演する。
初共演となる三浦さんと大島さん。三浦さんが「(大島さんが)うまくできない瞬間に感極まって(涙して)しまった時があった。こんなにまっすぐに向き合う方なんだと思った」と稽古中のエピソードを明かすと、大島さんは「その時に、『一緒に頑張ろう、味方だよ』と書いたメモを渡してくれて、頼れるし、信じて千秋楽までやろうと思った」と振り返った。三浦さんは「言わなくていいだろ」と照れ笑いを浮かべたが、大島さんは「恥ずかしいことを言われたから、言い返そうと思って」と返した。
娼婦の役を演じる大島さんは「傷やあざだらけだが、自分の体や心を殺しても信じるものがあることは人間を強くさせるのだと感じた」と話す。約1年海外渡航していたことから「(ブリーンさんの話の)6~7割くらい分かったが、直接本人の口から演出を受けて理解ができるようになったのは、(海外渡航は)自分にとってもいい経験になった」とも。
三浦さんとの絡みばかりという勝村さんは「寂しい思いをしている」と冗談めかしながら、自身の役について「犯人をただ捕まえるのが目的ではなく、改心させて自分で罪を認めさせる役。対決みたいになっているが、どんどん近づいていくなかなか見ない構図」と話す。極貧の中生きるカテリーナを演じる麻実れいさんは「約50年の芸歴でもこのような役は初めてでとっても怖いが、とても素晴らしい役をいただいた。楽しんでお客さまに届けたい」と意欲を見せる。
三浦さんは「彼(=ブリーンさん)が10年以上考え温めてきたこの作品を日本の皆さまに届けられることが喜ばしい。彼の思いはむげにできないし、少しでも報われるように一生懸命届けていきたい」と意気込む。「1幕はジェットコースターに乗ったような舞台上の動きに目を奪われ、2幕はそれぞれのキャラクターの心情、心の揺れ動きにフォーカスしている。そのメリハリ、コントラストを楽しんでいただければ」と来場を呼び掛ける。勝村さんは「非常に危険でけんかも多いし僕らは本当に大変だが、見ているお客さまにはとてもスリリングで飽きることなく届けられるのでは」とも。
上演時間は約3時間40分(休憩含む)。指定席(S席=1万500円、A席=8,500円ほか)は当日券のみ。現在は平日の立ち見券(中2階=3,500円、2階=2,500円)のみ販売している。2月1日まで。