2020年東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場となる新国立競技場(渋谷区千駄ヶ谷1ほか)の完成まで今月で残り1年となり、地元商店街などでも街を盛り上げる機運が高まっている。
1964(昭和39)年の東京五輪開催に伴い建てられた国立競技場(国立霞ヶ丘競技場・陸上競技場)を全面的に建て替える形で進められている工事は、地下工事や地上躯体(くたい)工事などを終え、現在屋根や内装・外装の仕上げ、歩行者デッキ工事などが行われている。並行して来年にはフィールド工事にも着手し、11月末の完成を目指す。
明治神宮外苑に隣接し、建築家・隈研吾さん率いる隈研吾建築都市設計事務所と大成建設、梓設計のチームによる共同企業体が設計・工事管理に参画する新競技場は、敷地面積約11万3000平方メートル、延べ床面積19万4000平方メートル(建築面積約7万2400平方メートル)。地上5階、地下2階、高さは47.4メートルで、座席数は完成時約6万席を設ける。文部科学省所管の独立行政法人「日本スポーツ振興センター(JSC)」が運営主体となり、施設も所有する。
「杜(もり)のスタジアム」として、周辺の緑に溶け込むよう高さをできる限り低く抑え、外周を取り囲む庇(ひさし)などに国産木材を採用。木材は鉄骨と組み合わせ屋根にも使われ、木の「ぬくもり」を出すほか、庇は在来種の植物で緑化も行う。最上階には「空の杜」と名付け1周約850メートルの散歩道を整備するなど市民に開放し、五輪開催後も開かれたスポーツ振興の拠点を目指す。
新国立競技場の「玄関口」として完成を待ち受ける千駄ヶ谷大通り商店街(グリーンモール)では、今年に入り住民らが「がんばれ日本」「ようこそ千駄ヶ谷へ」などとメッセージを書いた4000枚以上の折り紙で作る巨大ボードを制作するなど、五輪開催に向けて街を盛り上げる機運が高まっている。
競技場の目の前にある外苑西通り沿いの老舗ラーメン店「ホープ軒」の店主・牛久保英昭さんは「予定通り何とか無事に進んでほしい」と不安な心境を吐露しながらも、「ワクワクする気持ち。(建て替えが決まってから)月日がたつのが早かった。1年はもうすぐ」と期待を膨らませる。