閉店まで残りわずかとなった渋谷・桜丘の老舗立ち飲み居酒屋「富士屋本店」(渋谷区桜丘町)では、最後に店を訪れようとする客が後を絶たず、連日開店前から長蛇の列ができている。
桜丘で100年以上前に創業した酒販店「富士屋本店」が47年前、自社ビルの地階に開いた同店。木製カウンターがロの字形に配された店内で、主に200円台~300円台で提供する小料理やホッピー、レモンサワーセットなどのメニューを注文ごとに支払う昔ながらの立ち飲みが長年親しまれてきた。
客が所狭しと立つ活気ある店内で、隣り合わせた初対面同士の間にも自然に会話が生まれる――そんな人情味のある立ち飲みの「聖地」には世代を問わずファンも多く、閉店を知り訪れる人が後を絶たない。開店1時間前の16時過ぎにはすでに多くの人が集まり始め、開店直前にはビルの裏手まで人が回り込むほどの行列で、店では品切れなどのためラストオーダーの時間を早めるなどの対応に追われている。
金曜ということもあり、開店前から150人以上が列を作った10月26日。16時30分ごろから並び始めたという共に会社員の30代と40代の男性2人組は、それぞれこれまでに5回ほどは店を訪れていたという。「閉店と知って来た。渋谷で飲む時は『0次会』としてよく来ていた。クラシカルな雰囲気は他にない。寂しい」と残念がっていた。
同店を運営するダイニング富士屋本店の加藤賢一郎社長によると、店の片付けなどのため、当初10月いっぱいまで営業する予定を10月30日に1日前倒しにした。人が多く「食材などがなくなってしまうため、(通常は21時のラストオーダーのところ)20時過ぎには看板の電気を消して対応している状況」と言う。「31日には来ていただいても入れない」と注意を呼び掛ける。
営業時間は17時~。日曜・第4土曜定休。