渋谷駅周辺の大規模再開発の目玉の一つとなる高層複合施設「渋谷ストリーム（SHIBUYA STREAM）」（渋谷区渋谷3）が9月13日、開業した。併せて、再生された渋谷川に沿い整備された遊歩道、広場などの公共空間の供用が始まり、渋谷駅南エリアに新たな「まち」が誕生した。

開業でにぎわう館内

　2013年3月、旧東急東横線・代官山駅－渋谷駅間の地下化に伴い、旧東横線渋谷駅から最終列車が発車してから約5年半。旧東横線ホームと高架橋を解体し生まれた、渋谷から代官山方面に向かい南北に伸びる細長い用地で始まったまちづくりは、これまで置き去りにされてきた駅南エリアに新たな人の流れを生む。約600メートルにわたって整備された遊歩道の先には同日、複合施設「渋谷ブリッジ」も開業した。

　地上35階・地下4階、高さ約180メートルの「渋谷ストリーム」には、中層階（4階・9階～13階）に「エクセルホテル東急」が入るほか、上層部のオフィスには2019年度にグーグル日本法人が移転。隣接する7階建ての別棟にはホール「渋谷ストリーム ホール」（6階・7階、スタンディングで約700人収容）も開設する。

　旧渋谷駅の高架橋を再利用し、駅方面から渋谷ストリーム内部を抜ける歩行者通路も整備。国道246号線をまたぎ、旧駅舎跡に2019年度中の開業を予定している高層ビル「渋谷スクランブルスクエア東棟」と南エリアをつなぐ。東横線へのオマージュとして、横断デッキ屋根は「かまぼこ屋根」を再現、2階商業ゾーンの床面には、東横線沿線で使用していたレールを埋め込むなど遺構や面影を残すデザインを数多く取り入れたのも特徴。

　1階～3階の下層部となる商業ゾーンには飲食30店（うち2店は年内にオープン）が出店する。日本初上陸となるスペイン発シーフードレストラン「XIRINGUITO Escriba（チリンギート エスクリバ）」（3階）をはじめ、新業態はカスタマイズピザ店「CHITYSHOP PIZZA」や、軽井沢のレストラン「酢重正之」の新ブランドとなる「酢重Indigo」など13店が出店。1983（昭和58）年に恵比寿で創業した定食店「旬彩料理なかよし」（以上2階）は商業施設初出店となる。

　渋谷川上空に整備した稲荷橋広場からは2階にかけて、LEDでライトアップする大階段が出現。川沿いには金沢発のレモネード専門店「LEMONADE by Lemonica」やフレンチおでんを提供する名古屋発の洋風酒場カフェ「ビストロ るぅぱん SAKABA＆CAFE」が軒を連ねる。施設内唯一のスーパーマーケットとなる東急ストアの新業態「Precce Shibuya DELIMARKET」ではデリの対面販売やサーバーでのクラフトビール販売サービスも導入する。

　この日行われたオープニングセレモニーには、東急電鉄の高橋和夫社長、長谷部健渋谷区長をはじめ、建設中の同施設でデビュー曲のMV撮影した縁もあり「渋谷ストリーム ホール」のこけら落とし公演に出演する「欅坂46」のキャプテン菅井友香さんが出席。渋谷区をホームタウンにする男子バスケBリーグ「サンロッカーズ渋谷」のチアガール「サンロッカーガールズ」とマスコット「サンディー」がオープニングアクトを務めた。

　長谷部区長は「渋谷はずっと変化してここまで来ているが、この開発は今までの変化を超えて大きく生まれ変わるタイミング。新しく生まれ変わったが、昔の記憶がそこかしこにあるのも面白い。皆さんに楽しんでほしい」と呼び掛けた。「渋谷川沿いは、どちらかと言えばそんなに明るくないエリアだった。この開発によって水も増えて、気持ちのいい空間になった。代官山と恵比寿がつながることで新たな回遊が生まれれば」とも。

　今後グーグルの日本法人が入居することで「イノベーションが起きる力が集まるエリアとして、再びビットバレーとして動き出す機会になるのでは」と期待を込める。

　高橋社長は「渋谷は新しいものと昔ながらのものが重なり合ってまた良いものを生んでいる」と渋谷の魅力について触れ、「ここでいろいろな人が交じり合って新しい流れをつくってもらえれば、この街のポテンシャルが上がる。やっとできたというのが正直な思いで、非常にワクワク、気持ちが高揚している」と喜びを表現。来年の渋谷スクランブルスクエア東棟開業で、「駅の開発は8合目に到達する」と次を見据える。

　菅井さんは2年半前に、まだ更地だった同所でMVを撮り、川でジャケット写真を撮影した。「2年半前とは生まれ変わっていて、素直に衝撃を受けている。またここに立てて感慨深い。この場所が私たちの全てが始まった原点。ここに来るとまた初心に戻れる感じがする」と話した。

　11時に施設が開業すると同時に周辺のオフィスワーカーらが施設に流れ込み、ランチタイムにかけてにぎわいを見せている。

　営業時間は各店舗により異なる。