渋谷を拠点とするサイバーエージェント、ディー・エヌ・エー、GMOインターネット、ミクシィのIT大手企業4社が協賛するテックカンファレンス「SHIBUYA BIT VALLEY 2018(シブヤ・ビットバレー2018)」が9月10日、渋谷区文化総合センター大和田(渋谷区桜丘町)で開催された。
「シブヤ・ビットバレー」の名称は、米ITベンチャーの一大拠点「シリコンバレー」になぞらえ、データの最小単位「bit」、「渋い(Bitter)」と「谷(Valley)」を掛け合わせた造語。1998年、松濤にオフィスを構えた当時のネットエイジ・西川潔社長らを中心にITベンチャーの底上げを目指し「ビットバレー構想」を打ち出す。この構想に呼応して、当時創業間もないサイバーエージェント・藤田晋社長やGMOインターネット(当時インターキュー)の熊谷正寿社長ら多くの若手IT起業家が渋谷に集まり、一大ブームを起こした。その後、ITバブル崩壊などが影響し、わずか数年でビットバレー・ムーブメントは影を潜めた。
今回のシブヤ・ビットバレーの再興について、同企画の発起人であるサイバーエージェント技術政策室室長・長瀬慶重さんは「IT企業の中の技術者の需用性が増し、技術者不足が社会問題化する中で、渋谷のIT企業が協力し合ってアプローチできないか」という思いがきっかけだったという。かつてのブームから15年以上を経て、今回協賛する4社共に上場し、日本を代表する大手IT企業へと成長。渋谷ヒカリエに本社を構えるディー・エヌ・エーに加え、2019年、サイバーエージェント、ミクシィは東急電鉄が東横線渋谷駅跡に建設中の高層ビル「渋谷スクランブルスクエア」東棟、GMOインターネットは東急不動産が建設中の「道玄坂一丁目駅前地区(旧・東急プラザ)」に、それぞれ新社屋を構え、渋谷駅周辺に4社が集結。「(技術者不足や新社屋への移転など)さまざまな時流が重なって(今回のシブヤ・ビットバレー再興の)発表ができた。来年2019年の#1を目指し、今回は#0として位置付けている」(長瀬さん)。
若手エンジニアを対象とした今回のイベントは、「渋谷で働くエンジニアは楽しい」をテーマとして、協賛4社に加えてグーグルやスマートニュース、クックパッドなど計22社の経営者、技術者が参加し、24のセッションを展開。会場は1000人の若手エンジニアや起業家志向の若者たちのほか、スカラシップ枠(交通費支給)として招待された地方在住の学生120人で満席となった。
開会あいさつで登壇した長谷部健渋谷区長は「渋谷区もビットバレーの一員に加えていただき、全国で最もITの進んだ街にしていきたい。渋谷区は小中学校にタブレットを配布し、プログラミング教育も進めているため、IT企業のサポートにも期待したい」とIT企業の集積やビットバレーの再興を歓迎した。
若手エンジニアにとって渋谷が最適な職場である理由について、熊谷社長は「過去の産業革命の平均寿命は55年間。IT業界は始まって、まだ二十数年で、24時間に例えるなら今はちょうどランチの時間。まだおいしいディナーが待っている産業がインターネット産業。従って、エンジニアを志向する皆さんの選択は正しい。2年後には渋谷駅に降りると、周囲にはIT企業が入居する巨大なビルばかりになる。同業者との接触機会が大幅に増え、必然的にそこからイノベーションが起きる」とIT業界の将来性を約束する。さらに藤田社長は「僕はこの歳になっても、銀座の高級クラブで飲むとアウェー感がある。でも六本木や西麻布で飲むのは何となく気楽。仕事も同じでアウェー感のある場所だと、やたら時間が長く感じることがある。大きな会社には謎の権威や習慣、理不尽な上下関係も残っているが、渋谷は圧倒的にエンジニアが働きやすいホーム」と渋谷での働きやすさを強調した。
来年夏には#1の開催を予定し、「1週間程度のエンジニア向けのテックカンファレンスとして規模を拡大し、動員数を1万人くらいにしたい。夜は道玄坂で、エンジニア同士でミートアップしたり飲んだりするなど、渋谷が一日中エンジニアのお祭りになれば」と長瀬さん。今後はイベントのほか、渋谷区と連携しながらIT企業間でさまざまな実験や取り組みなども進めていくという。