東京五輪年である「1964(昭和39)年の渋谷の街並み」を3Dで再現する「1964 SHIBUYA VRプロジェクト」が昨年10月に一般社団法人「1964 TOKYO VR」主導で発足し、当時の「渋谷の街」の写真を所有する企業や個人に向けて協力提供を求める活動を開始。約10カ月にわたる活動の進捗(しんちょく)報告とVR体験会が8月21日、クリエーティブスペース「EDGEof」(渋谷区神南1)で開かれた。
萩本欽一さん、長谷部健渋谷区長らVR体験会に参加したメンバ-
日本テレビの土屋敏男さん、ライゾマティクス・齋藤精一さんらを中心に組織する同法人は、過去の古い写真や画像から、最新の3D技術「フォトグラメトリー」を用いて「東京の昔の街並み」をVR(バーチャル・リアリティー)で再現するために設立。100年に一度の大規模な再開発が進む「渋谷」を第1弾企画として選び、この半世紀で渋谷がどう変わったのかを臨場感ある3DVRで再現している。
今回の報告会では「渋谷駅~表参道~国立競技場~旧都庁(日比谷)」の1964年の聖火リレーを行ったコースをたどり、約4000棟の建物をプロットした3DVRモデルが報道向けに初公開。当時の航空写真を元に高さを割り出して、約10カ月間かけて3D化した4000棟の建物の立体をマップにプロット。現在、その無表情な白地の建物に提供写真をデジタルスキャンして一枚一枚当てはめ、表情豊かな街の輪郭をよみがえらせていくという作業を進めている最中だという。制作を担当する齋藤さんは「皆さんから提供された写真の総数は1100枚ほど。当時の街を知るシニアや区のシルバークラブの方々などに聞き取りを行いながら、場所の特定を進めている。現在、渋谷駅前の完成度は30%程度。まだまだ白地の建物が多く見られるが、そこは写真が足りていないところ」と進捗状況を明かす。
VR体験にはタレントの萩本欽一さん、長谷部健渋谷区長も参加。ヘッドセットを装着して、3D再現した1964年当時の渋谷駅周辺を体験した萩本さんは「(今では)もう見ようと思っても、見られないものが見られた。この時代に僕は渋谷に住んでいたので懐かしい」とVRを通じて当時を振り返った。
今後のスケジュールについて、齋藤さんは「2020年の東京五輪までには、渋谷から日比谷までの1964年の聖火の道を完成させたい。余力があれば、当時のマラソンコースだった甲州街道も再現できれば」と話す。
公式ホームページでは今も、3Dモデル化に必要な「1964年前後の渋谷」の写真を募集している。