1980年代に活躍したアーティストのキース・ヘリング生誕60年を記念した特別展が8月9日、表参道ヒルズ(渋谷区神宮前4)本館地下3階の「スペース・オー」で始まった。
アーティストのキース・ヘリング生誕60周年を記念した同展。ヘリングは1958年米ペンシルベニア州出身。1980年、NYの地下鉄構内の広告板にチョークで絵を描く「サブウェイ・ドローイングス」を始め脚光を浴びた。1988年にAIDSと診断され、翌年に恵まれない子どもたちへの基金やHIV・AIDS予防啓発運動を継承していくための財団を設立。1990年に31歳で亡くなるまでアートを通して社会活動にも積極的に関わった。
「Pop, Music & Street キース・ヘリングが愛した街 表参道」と題した同展では、中村キース・ヘリング美術館(山梨県)が所蔵するヘリングのオリジナルポスター(58点)やレコード・カバー(13点)などを展示する。入場口は同館のエントランスを模した空間に仕上げ、LGBTの象徴とされる6色のネオン管を配している。
今回世界初展示するのは、1988(昭和63)年1月24日に来日した際に表参道の歩行者天国で路上にチョークでドローイングしている写真約30点。展覧会の開催が決まっていた昨年12月、撮影者の岸田晃さんから寄贈を受けたという。多くの来街者がヘリングの絵を囲んでいる様子や、写真撮影に応じているヘリング、警察に注意を受けているヘリングなどが見られるほか、同年南青山の空き地にコンテナでオープンした自身のショップ「ポップショップ」のファサードにペインティングしている写真も並ぶ。同じ日に代々木公園近くでブレークダンスをしていたダンサーたちをインスピレーション源に行ったライブドローイングのパフォーマンスや若者たちと交流する様子を捉えた映像(5分11秒)は都内初公開となる。
ポスターは、「サブウェイ・ドローイングス」を模して描いた初個展の告知(1982年)や、ギャルリー・ワタリ(現ワタリウム美術館)で行った日本初個展の告知(1983年)、親交があったアンディー・ウォーホルに勧められたこともあり手掛けたというウオッカブランド「アブソールト」の広告、自費で2万枚プリントしNYセントラルパークで配布したという「核放棄のためのポスター」「Free South Africa」、広島で開催された平和祈念コンサート「平和がいいに決まってる!!」に向けた白いハトをイメージして描いたポスター(1988年)、ウォーホルと共作したジャズフェスティバルのポスター(1986年)などが並ぶ。
レコード・カバーは「好きなアーティスト」の作品しか手掛けなかったといわれ、ヘリングが足しげく通っていたNYのクラブ「パラダイス・ガラージ」のDJラリー・レバンのレコードなどが並ぶ。場内の作品は全て撮影可能(フラッシュはNG)。
場内には「ポップショップ」を再現した物販エリアを展開。かねてポップショップで販売していたTシャツなどのデッドストックやヘリングの複製ポスター、ヘリングのイラストを使ったグッズなどを販売している。
中村キース・ヘリング美術館顧問の梁瀬(やなせ)薫さんは「キースのアートを身近に見て、楽しんでもらえたら。80年代の作品だが、共感・共鳴できる作品があると思うので、それを見つけ出してほしい」と来場を呼び掛ける。
開催時間は11時~21時(12日までは20時まで、最終日は18時まで)。入場無料。今月19日まで。