渋谷駅ハチ公前広場に6月16日、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が難民向けに提供している家族用テントが一日限定で出現した。
UNHCRと国連UNHCR協会が6月20日の「世界難民の日」に合わせ設営。「ソーシャル・アクションin渋谷」と題し、難民キャンプでの暮らしや現地で暮らす子どもたちの現状を紹介。署名や寄付を呼び掛けた。
この日は8時30分にテント設営を開始。テント内ではプロジェクターで写真家・内藤順司さんがバングラデシュで撮影したロヒンギャ難民の写真を映し出し、キャンプで使われている、保温容器で省エネできるかまどセットや水貯蔵用のバケツなども展示。職員らが現地の暮らしや問題について解説した。
UNHCR協会・国連難民支援プロジェクトグループマネジャーの唐沢成佳さんは「テントは雨風にも強く、2部屋に仕切ることなどもできる。省エネかまどを使うと限られたまきでも調理できる」と支援で得られる成果を明かす一方、「シリアやロヒンギャの難民問題はメディアの露出が多いが、ルワンダや南スーダンなどアフリカにも難民はたくさんいる。支援には全体で8,000億円が必要な中、半分しか集まっていない」と危機感もにじませる。「難民の50%は子どもたち。まきを拾いに行くと誘拐され行方不明になる子どもも多い。教育の問題もある」と、職業訓練など緊急支援の先にある長期的支援の必要性を訴えた。
現在難民の数は120カ国以上6700万人に上るといわれ、「日本では名前も知られていないような国や地域にも支援を必要とする難民がいる。テントを見てくださった方たちにはまず『難民と移民の違いは何か』というところから説明している。最初は急いでいる様子だった若い人たちも、真剣に耳を傾け、最後には進んで署名していってくださる方も多い。ありがたい」と目頭が熱くなった場面もあったという。
UNHCR広報官の守屋由紀さんは「朝からひっきりなしに、シニアから子ども連れの方まで来ている。用意したフォトスポットで写真を撮りSNSにアップする方も多い。反響は大きい」と話し、「世界難民の日」の周知にも手応えを感じているという。
母親と一緒にテントを見て回った北区の5歳の女の子は「住んでみたら楽しそう。スライドショーも面白かった」とキャンプのような空間を楽しんでいたが、「(ずっと住んでいたら)つまんなくなる」と、平均17年~18年間テントで暮らし続ける難民キャンプの現状については想像できない様子だった。
会場では、「#難民とともに」キャンペーンとして、今年9月の国連総会で採択を目指す難民保護の国際的行動計画「難民に関するグローバル・コンパクト」への署名を募り、署名した人にはUNHCRのリストバンド(非売品)を進呈。シダックス(神南1)も協賛し、今月20日までに集まった署名1件につき、難民の子どもに提供する栄養補助食品1パック分に相当する50円を、UNHCRに寄付する。署名はオンラインでも受け付けている。