渋谷の待ち合わせスポットで観光名所としても広く知られる渋谷駅前広場の「忠犬ハチ公像(以下ハチ公像)」前で4月8日、モデルとなった秋田犬「ハチ」の慰霊祭が行われた。
ハチは、現在の東急本店(渋谷区道玄坂2)裏手付近に住んでいた東京帝国大学(現・東京大学)上野英三郎博士に飼われていた秋田犬。
1923(大正12)年11月に秋田で生まれ、上野博士を渋谷駅(現・JR渋谷駅)に送り迎えをしていたハチは、1925(大正14)年に上野博士が亡くなった後も駅前で博士の帰りを待った。その様子を模して彫刻家の安藤照が制作した同像は1934(昭和9)年に設置。ハチは除幕式に出席するも、翌1935(昭和10)年3月8日に死んだ。太平洋戦争中の1944(昭和19)年、金属類回収令により同像は撤去されるが、1948(昭和23)年に安藤の長男・士(たけし)さんが2代目となる現在の像を制作した。
ハチの命日から1カ月後に当たる4月8日に行っている慰霊祭は今年で83回目を迎えた。主催した忠犬ハチ公銅像維持会・上條清文会長は「ハチ公の上の博士に対する忠義の心などは不変のもの。街のシンボルとして守ることで無償の愛などを後世に伝えていきたい」とあいさつ。長谷部健渋谷区長は「ハチ公のお陰で世界中と大きな縁をもらっている。成熟した国際都市を目指す上で、ハチ公の物語は世界に誇れる物語」とも。
祭典では、神主による修祓(しゅうばつ)、祝詞の奏上後、上條会長や長谷部区長、秋田県大館市福原淳嗣(じゅんじ)市長、上野博士の孫である上野一人さんら参列者が玉串を奉典。最後に上條会長と長谷部区長がハチ公像に花輪を献上した。