東京都写真美術館(恵比寿ガーデンプレイス内、TEL 03-3280-0099)2階で3月6日、企画展「写真発祥地の原風景 長崎」が始まった。
初期写真(19世紀の写真)を紹介する新シリーズの第1弾となる同展。同館では10年以上、初期写真に関する国内の公共機関への調査研究をまとめた「夜明けまえ 知られざる日本写真開拓史」を隔年で開催してきたが、新シリーズでは日本の「写真発祥地」と位置付ける土地に焦点を当て、日本の「写真文化発展の源流」を考察するとともに「初期写真の記録性」に着目。今後「北海道編」「東京編」も予定している。
鎖国中の江戸時代に貿易の窓口となっていた地であり、1849(嘉永元)年に蘭学者・上野俊之丞らが日本最初の写真機材一式を輸入したことから「写真発祥地」と位置付けた長崎。政府が主唱する「明治150年」と、長崎大学付属図書館の幕末・明治期日本の写真データベース公開20年を記念し、同大との共同開催となる。
場内は4章で構成し、306点を展示する(途中展示替え有り)。第1章は「江戸期の長崎」と題し、長崎の古地図、絵巻物、ラクダやゾウなどの動物、ロシアやオランダ人の錦絵など、写真が入ってくる前の長崎を紹介する。
長崎を訪れた外国人写真家と幕末・明治の写真技術や長崎の写真家を紹介する「長崎と写真技術」エリアには、「日本人が撮影した」最古の写真という「島津斉彬像」(レプリカ、1857年)や内田九一が撮影した明治天皇、上野俊之丞の次男・彦馬が使ったカメラや携帯暗室、ジョセフ・ピエール・ロシエが撮影した写真、招待したオランダ人医師A.F.ボードインらの写真などが並ぶ。
第3章「長崎鳥瞰(ちょうかん)」では、プロイセン東アジア遠征団写真班が撮影した長崎のパノラマ写真(1861年)をはじめ、フェリーチェ・ベアト、内田、彦馬らが撮影した長崎港や長崎市街を広く捉えた写真を展示。同じような場所を異なるアングルで撮ったカットなどを並べ長崎を多角的に見ることで、長崎を空間的に理解できるようにしたという。
最終章では逆に「クローズアップ長崎」として長崎のさまざまな場所に視点を当てる。出島を筆頭にグラバー庭園や英国領事館、眼鏡橋、ベアト・彦馬・内田それぞれが撮影した大光寺などに加え、オランダ人宣教師グイド・フルベッキと武士が写った「フルベッキ集合写真」(1868年ごろ)、諏訪神社の祭礼「長崎くんち」を収めた写真なども並べる。6つの小箱が入った「長崎風物図箱」は、ふたや側面に施されている装飾の元となった写真も一緒に紹介している。
期間中、担当学芸員によるギャラリートークやシンポジウム、ワークショップも予定。開館時間は10時~18時(木曜・金曜は20時まで)。観覧料は、一般=700円、学生=600円ほか。月曜休館(4月30日は開館)。5月6日まで(4月9日に展示替え)。