渋谷・宇田川町のミニシアター「アップリンク」(渋谷区宇田川町)で9月16日から、少数民族の少女が差別にあらがい生き抜く姿を描いた「サーミの血」が公開される。
昨年の東京国際映画祭コンペティション部門でアジアン・プレミア上映され、審査員特別賞と主演女優賞をダブル受賞した同作。スウェーデン北部などラップランド地方で生活する少数民族・サーミ族を題材にした作品で、サーミ人の父親を持つアマンダ・ケンネル監督が自身のルーツをテーマにした同作を製作した。
舞台はサーミ族が劣等民族とみなされ差別的な扱いを受けていたという、1930年代のスウェーデン。サーミ語を禁じられた寄宿学校に通う少女エレ・マリャは高校に進学したかったが、教師に「あなたたちの脳は文明に適応できない」と言われてしまう。スウェーデン人のふりをして忍び込んだ夏祭りで出会ったスウェーデン人の少年ニクラスと恋に落ち、エレはニコラスを頼って家出をする――。
同作はドラマではあるものの、ケンネル監督が祖父母やその兄弟姉妹、同じ寄宿学校に行った人たちにインタビューした時に聞いた時の話も脚本に取り入れたという。ケンネル監督は「映画で描かれていることの中には、サーミの血を引くものなら誰でも、今も実際に体験することがある」と話す。
南サーミ人で、普段はトナカイの世話をしながら暮らしているレーネ=セシリア・スパルロクさんを主演にキャスティングしたことで「500人しか話さない言語を話し、伝統的な民芸品のことをよく知り、普段からトナカイを飼育している彼らのおかげで、当時の生活や人々の感情をリアルに描くことができた」振り返っている。