今年の「Bunkamuraドゥマゴ文学賞」に中村文則さんの小説「私の消滅」(文藝春秋)が選ばれた。 1990年の創設以来、「毎年変わるただ一人の選考委員」によって受賞作を決定してきた同賞。26回目となる今年は名古屋外国語大学学長でロシア文学者の亀山郁夫さんが努めた。
受賞作に選ばれたのは、「文學界」(文藝春秋)6月号に掲載後、即単行本化された話題作。中村さんは1977(昭和52)年、愛知県生まれ。2002年、「銃」で新潮新人賞を受賞しデビュー。2004年、「遮光」で野間文芸新人賞、2005年、「土の中の子供」で芥川賞、2010年、「掏摸 スリ」で大江健三郎賞を受賞。2014年、ノワール小説に貢献した作家に贈られる米文学賞デイビッド・グディス賞を日本人で初めて受賞。作品は世界各国で翻訳されている。
選評の中で亀山さんは「作家としての彼の類まれな資質と、この小説のもつ『先進性』に敬意を表する」「構造的に恐ろしく複雑な仕掛けが、独自の境地を生んでいる」「超越文学ないしAI文学の新しい実験に連なるもの」と称賛。
受賞した中村さんは「大変うれしく、光栄に思います。賞を頂くということは、その作品への評価だけではなく、今後の作家生活への励ましを頂くことだと感じます。魔力と光を合わせもつような小説を、今後も目指していきます。ありがとうございました」とコメントしている。
授賞式は10月13日、Bunkamura(渋谷区道玄坂2)で行われ、副賞として100万円が贈られる。