西武渋谷店(渋谷区宇田川町)A館7階特設会場で5月11日、美術作家・深堀隆介さんの回顧展「金魚養画場~鱗(うろこ)の向こう側~」が始まる。
「金魚絵師」と称される深堀さんは1973(昭和48)年愛知県出身、現在神奈川県在住。愛知県立芸術大学美術学部デザイン専攻学科卒業。2000年のスランプ時、「粗末に」飼っていた金魚に「初めて魅了された」ことをきっかけに、金魚をテーマにした作品の制作を始める。2002年から手掛けている器などに透明樹脂を流し込み、その上に直接金魚を描くことを繰り返し立体的な金魚絵を作り上げる作品で知られ、国内のみならずNYやロンドンなど海外でも個展を開いている。
回顧展の開催は初めてで、金魚をテーマにした作品が誕生して15年を迎えたことを記念した。樹脂作品をはじめスケッチブックやドローイング、ペインティング作品など、初期作品から初披露となる新作まで約50点を展示。場内は、初期作品や升を使った代表作「金魚酒」などを展示するエリアや、柿右衛門・会津塗などの伝統工芸品とコラボレーションした作品群、白磁にうろこを描く新作「鱗化(りんか)」シリーズのエリアなど、4つのゾーンで構成する。
場内には、前日の10日に開かれた内覧会で深堀さんがライブペインティングで描いた作品も並び、深堀さんのアトリエを「再現」したコーナーでは、今月14日・15日(14時~17時予定)に深堀さんが来場し公開制作を行う。
過去の作品が一堂に並ぶ場内を見て「制作を続けていると忘れていってしまうので、たくさん作ってきたんだな、という感じ。手元を離れた作品ばかりなので、客観的に見てもワクワクする」と笑顔を見せる深堀さん。樹脂は固まるのに2日かかることから樹脂作品は1つ作るのに2カ月以上かかることもあるという。「下手くそだったな、苦労したななどそれぞれにエピソードもある」と振り返る。
金魚をモチーフにした作品の制作を始めたころは「2~3年で終わるかなと思っていた」というが「まだいける(制作意欲が)ありすぎる」と言い、「脱皮をしたい。(新シリーズの「鱗化」のように)樹脂以外の作品に挑戦していきたい」と展望する。
「金魚は赤・黄・黒・パール・白(空気の色)の5色なのに地味に感じないのは、日本人の美意識なのでは」と言い、その魅力を「透明な体の奥にご彩色を持っている」「外観は男(雄)だが、裏を返すと女(雌)。両性具有のようなところ」と話す。「癒やし癒やされる相互関係から作品が生まれてくる。作品がどう生まれるか、僕の金魚の愛(め)で方を感じていただければ」と来場を呼び掛ける。
開催時間は10時~21時(日曜・祝日は20時まで、最終日は17時まで)。入場料は500円ほか。今月29日まで。特設会場内は撮影可。期間中、B館8階オルタナティブスペースでも作品を展示する。