渋谷ヒカリエ(渋谷区渋谷2)で11月18日、「働き方」をテーマとしたイベント「TOKYO WORK DESIGN WEEK 2015(略称=TWDW2015)」が開幕した。オープニングの基調講演には、著書「スタンフォードの自分を変える教室」などで知られる心理学者のケリー・マクゴニガルさんと、「寿命を10年のばすゲーム」を考案しTEDなどで話題を集めるゲームデザイナーのジェイン・マクゴニガルさん姉妹が、そろって登壇した。
前半はジェインさん、ケリーさんが各30分間ほどの講演を行い、後半は「WIRED日本版」の若林恵編集長をモデレーターに3人でトークセッションを行う構成。
「こんばんは」という元気なあいさつとともにステージに上がったのは妹のジェインさん。ゲームデザイナーのジェインさんは「日本人の3人に1人が毎日、電話でゲームをする」「日本人がモンスターストライクをプレ-する時間は毎日3000万分で、フルタイムの労働者8万7500人に相当する」などの科学的なデータを紹介しながら、「素晴らしい」と称賛。一般的にゲームをすることはネガティブに受け取られがちだが、ジェインさんは「ゲーマーはチャレンジが好きで厳しい中でも諦めない人」と絶賛し、ゲーマーを「Super-Empowered Hopeful Individuals」と呼ぶ。実際にゲームプレー中の脳内をスキャンすると脳が活性化し、「意欲」と「集中力」が高まることが実証されているという。
こうしたデータを基にストレスが高く、仕事に対する情熱が低いといわれる日本人に対し、「ゲーマーのマインドセットを仕事や実生活に生かす」ことを強く勧める。実現する方法としては「5分間ゲームを行った後、いったんゲームをやめて、仕事や実生活の問題や課題について考えてみてほしい」と言い、脳の力を効果的に引き出すことができるゲームの有用性を説いた。
続く心理学者、姉のケリーさんの講演テーマは「ストレス」。121カ国でストレス指数を調査したところ、日本、アメリカは共に「ストレスを感じている」という声が3分の一に達し、GDPや平均寿命が高い国ほど高いストレスを抱えていることが分かったという。ストレスは有害なものと思われがちだが、「意義ある生活があるからこそストレスがある」と言い切るケリーさん。トップアスリートはストレス反応が高いときの方が高いパフォーマンスを発揮できるという実証データも紹介。普段の生活でも、自分にあえてストレスを掛けて挑むことで高い集中力とパフォーマンスにつながる。逆にストレスを減らすことを考えると、成長や学びも減ってしまうという。
ジェインさん、ケリーさんのトークテーマである「ゲーマー」「ストレス」ともに、「ネガティブと思われがちなものに新しい価値がある」ことを力説。会場を埋めた約130人の参加者は、同時通訳のレシーバーに真剣に耳を傾けた。
若林編集長を加えた後半のトークセッションでは、ジェインさんがゲームに興味を持った理由から一卵性双生児の2人の幼少期に至るまで、姉妹ならではのエピソードを披露した。同じイベントに参加する機会は今までにもあったが、2人でトークセッションするのは今回が初めてだという。若林編集長から2人に、「僕は短気で、我慢できず、すぐに編集部のスタッフを怒鳴りつけてしまうが、どうしたら直せるか?」という相談も飛び出し、会場の笑いを誘った。
トークイベントは日替わりでゲストスピーカーを招き最終日まで続く。今月24日まで。