渋谷区文化総合センター大和田「さくらホール」（渋谷区桜丘町）とシダックス・カルチャービレッジ「カルチャーホール」（神南1）で8月、子ども向けの映画祭「キネコ国際映画祭2015」が開催される。主催はキンダー・フィルム（新宿区）。

会見に参加した戸田恵子さんら

　ベルリン国際映画祭児童映画部門「キンダー・フィルムフェスト・ベルリン」の協力を得てスタート「キンダー・フィルム・フェスティバル」が前身となる同映画祭。1992年の第1回は東京都児童会館（渋谷1）で始まり、「こどもの城」（神宮前5）、日比谷公会堂調布市グリーンホールなど会場を移して開催してきた。

　23回目を迎える今年、「日本の作品を世界に発信する」ことを新たな目標に掲げ、「世界的に注目を集める」渋谷に開催地を戻した。同時に、魔除け・幸運などを意味する「黒い招き猫」と「キネマ（映画）」を掛け合わせた造語「キネコ」に改名。かつての「キンダー・フィルム・フェスティバル」は、「世界から見るとドイツの映画祭の印象が強かった」こともあり、数年前から日本独自の名称への変更を考えていたという。

　同祭では、セリフがある上映作品は全てその場で日本語の吹き替えを行う「ライブシネマ」で上映するのが特長。今年は新たに、コンペティション作品のみを対象にバリアフリー上映を始める。通常の吹き替えに加えて、作中の必要な状況を副音声（ライブ）で伝えるほか、風上の翻訳字幕に加えて作中の音楽などの状況を特殊な字幕を付ける。

　期間中は国内外の約40作品を上映予定。一般公募する子どもたちがグランプリを決める「コンペティション部門」には、長編2本、短編13本がラインアップ。作品は、モントリオール国際子ども映画祭でグランプリを獲得した長編「しあわせなアヒルの子」、アカデミー賞短編アニメーション賞受賞作「つみきのいえ」などを製作した映像制作プロダクション「ロボット」（恵比寿南3）が手掛けた「ゴールデンタイム」（以上、対象年齢5歳～）など。特別上映作品として、クレイアニメーション「ひつじのショーン」の劇場版「映画ひつじのショーン」、スタジオジブリの「かぐや姫の物語」（以上、各5歳～）、英発「きかんしゃトーマス」、コウテイペンギンのキャラクターが主人公の「ピングー」（以上、1歳～）なども決まっている。

　さらに今年は戦後70年を迎える年であることから、イスラエル映画を特集。ポーランドの作家ウーリー・オレルブさんの「走れ、走って逃げろ」を原作にした、8歳のユダヤ人少年が身の上と名前を偽ってナチス・ドイツを逃れ終戦までの3年間を生き抜いた実話を基にした「ふたつの名前を持つ少年」など長編・短編各2本。

　期間中、シダックス・カルチャービレッジ内では、映像クリエーターを招いたワークショップや「ライブシネマ」体験などのイベントを開催。レストランカラオケ「渋谷シダックスビレッジクラブ」（神南1）1階の「東京メインダイニング」ではコラボメニューの提供も予定する。

　6月23日にはシダックス・カルチャーホールで開催に向けた記者発表会を開いた。2008年から同祭に参加し、ディレクター・ジェネラルを務める女優で声優の戸田恵子さんは「（日本は）子ども目線の作品・映画祭がすごく少ない。1人でも多くの子に見てもらい映画を大好きになってほしい。ハンディのある子にも率先して参加してもらえたら」と話す。「とにかく1回来てもらえたら、また行きたいという気持ちに必ずなる」とも。

　プログラミング・ディレクターを務める中山秀征さんは「（参加以降）4人の子どもたちと毎年一緒に作品を見ていて、見逃してはいけない作品もあるということを感じている。映画を見た感動を焼き付けてほしい」と呼び掛け、「渋谷の街がキネコの雰囲気になってほしい」と期待を込める。

　同祭実行委員長を務める志太勤一シダックス社長兼会長は「こどもの城や児童会館が閉鎖し、子どもたちが遊びながら学ぶ場所が減ってきている」と指摘し、「渋谷がファミリーにやさしい街になるように、企業ができる応援をしていきたい」と話した。

　同祭では現在、「バリアフリー上映」実現に向けクラウドファンディングサイト「モーションギャラリー」で支援を募っている。目標金額は800万円。期間は8月10日まで。

　開催日は8月11日～15日。鑑賞料は、さくらホール＝前売り・子ども500円、大人（18歳以上）1,000円、当日・子ども700円、大人1,300円、シダックス・カルチャーホール＝当日のみ大人・子ども500円。いずれも2歳以下無料。