渋谷・松濤の「観世能楽堂」(渋谷区松濤1)が3月30日、閉場した。
南北朝時代に大和(現・奈良)で活動していた猿楽芸能の一座「結崎座」が基となる観世流。観世流の活動拠点となる同施設は、1972(昭和47)年に佐賀藩主・鍋島家の邸宅跡である現在の場所に開場。敷地面積は約700坪。場内には席数は552席を備えている。開場から40年以上がたち老朽化が進み、耐震構造などを備えるには設備投資が必要であることや、住宅地であるため建て替えも難しいことから移転することを発表している。
観世会主催の公演を毎年年約26公演、観世会会員の各同門会などの公演を年約130公演以上行い、総公演数は7337公演に上る。3月に入ってからは、解説付き上演や楽屋見学ツアーなどを含めた「さよなら公演」を行ってきた。
最終日を迎えた同日、最終公演には多くの人が来場。観世会理事長で二十六世観世宗家・観世清河寿(きよかず)さんは「ご厚情の支えがあり本日をもって43年の歴史に幕を閉じることができた。(移転開場まで)2年と時間が空くが一層精進する所存」とあいさつ。その後鏡開きが行われ、来場客に酒を振る舞った。
移転先は、2016年に銀座松坂屋跡(中央区)を中心に完成予定の複合ビル。ビルはJ.フロントリテイリングや森ビルなど4社が施設計画と運営を手掛けるもので、新しい観世能楽堂は地下3階に開場。現在の観世能楽堂とほぼ同規模になるが、席間を広くしたりシートを大きくしたりするため席数は少し減る見込み。舞台は現在の観世能楽堂のものを移築する。
新しい観世能楽堂が完成するまでは梅若能楽学院会館(中野区)の舞台で観世会主催公演を行う。