原宿の浮世絵専門「太田記念美術館」(渋谷区神宮前1、TEL 03-3403-0880)で10月1日、「没後150年記念 歌川国貞」展が始まる。
今年没後150年を迎える江戸後期の浮世絵師・歌川国貞(1786年~1864年)の回顧展となる同展。役者絵・美人画で名声を得た歌川は、22歳で浮世絵界にデビューしてから79歳で亡くなるまで数万点の作品を残している。同展では会期を通して263点(前後期で全点展示替え)を紹介する。
初期の作品群では、デビュー作と見られる錦絵「契情十二時(午の刻)」(1807年3月)をはじめ、初の大首絵「役者はんじもの」シリーズ、下部に2枚・上部に1枚の凸型の構図で描かれた「七代目市川団十郎の成田山不動座像 五代目岩井半四郎のせゐたか童子 五代目松本幸四郎のこんがら童子」(以上1812年)、版本の挿絵などが並ぶ。
同時に、同展に関する調査の過程で、日本浮世絵博物館で見つかったという武者絵「熊谷次郎直実」も初公開。武将・熊谷次郎直実の騎馬姿を描いた作品で、落成款識(かんし)や画風から1809年ごろの作品と考えられるという。
かつらの生え際の線やまつ毛を描くなどしている歌川の役者絵の代表作とされる大首絵「大当狂言ノ内」シリーズ(1814年~15年)を手掛けた時期は、役者絵や美人画を精力的に描け、人気浮世絵師としての地位を確立した時期だという。役者絵の中には、日常や別宅での様子などを描き、歌舞伎役者との関係の深さをうかがわせる作品や、鏡の中に映っている女性の姿を描いた美人画「今風化粧鏡」シリーズ(1823年ごろ)など、枠のデザインを工夫した作品も登場する。
1844年、59歳で師の「豊国」の名を襲名。以降手掛けたのは、シリーズの中には7000枚売れた作品もあるという、東海道五十三次の宿場の風景とその宿場から連想される歌舞伎役者を描いた「役者東海道」シリーズ(1852年)などで、人物は国貞(三代豊国)が描き背景を同門の歌川広重が描いた合作も多く作られている。最晩年の下絵集「江戸美人尽」(仮題、1864年ごろ)は出版されることの無かった作品で、指示書きや紙を貼った直しなどから、道具などの細部は別の絵師に依頼したと推測されている。
同世代の広重や歌川国芳と比べると知名度は「決して高くない」絵師ではあるが、東海道五十三次の京都を背景に石川五右衛門を描いた「東海道五十三次之内 京 石川五右衛門」(後期展示)は、スパゲティー店「洋麺屋 五右衛門」のロゴマークに使われている。
開館時間は10時30分~17時30分(入館は30分前まで)。月曜休館(月曜が祝日の場合は翌火曜)。入館料は、一般=1,000円、大高生=700円、中学生以下無料ほか。11月24日まで(10月27日~30日は展示替え)。