「渋谷がオトナになる日」をキャッチコピーに掲げ渋谷マークシティが開業して、2020年春で20年がたつ。SHIBUYA109の人気の高まりとともに、1990年代の渋谷センター街は女子高生を中心としたティーンエージャーが跋扈(ばっこ)していた。「渋谷は若者の通行量は多いが、実際の売り上げに結び付かない」「子どもばかり増えても客単価は上がらない」という地元商店主の声も聞かれた90年代後半。ビットバレーと言われた渋谷だが、床面積のあるオフィス供給に限りがあり、成長したベンチャー企業は渋谷以外への移転を余儀なくされていた。そこに登場したのが大型賃貸オフィスビルでもある渋谷マークシティ。以後、渋谷駅周辺の再開発が進み、オフィス供給が増えることでITワーカーがじわじわと増えてきた。20年の時を経て「渋谷スクランブルスクエア」が開業。渋谷の街は名実共にオトナの街に変貌を遂げたのだろうか。シブヤ経済新聞の記事で再開発の足跡をたどる。
シブヤ経済新聞が自らの取材対象エリアを「広域渋谷圏」と定めてニュース配信を始めた2000年4月7日、渋谷マークシティが開業した。キャッチコピーは「渋谷がオトナになる日」。京王電鉄、東京メトロ、東急が所有する土地を有効活用し、オフィスやホテル、ショッピングモールが一体化した空間は、それまで渋谷に無かった「アダルト」なイメージを持ち込んだ。さらに、人気が高まり始めた円山町方面に抜けることのできる新しい導線も生み出した。同じ日、「食のテーマパーク」を掲げデパ地下ブームの先駆けとなった「東急フードショー」が、東急東横店西館・南館の地下1階に登場した。上層階は1フロア700坪(基準階)のオフィスエリアで、広いオフィスへの需要が逼迫(ひっぱく)していた渋谷に風穴を開けた。
東京急行電鉄(当時)本社跡地に2001年4月1日、オフィス、ホテルなどから成る地上41階・地下6階の超高層ビルが開業。開業時から2010年まで、米グーグルの日本法人も入居していた。5月24日には「セルリアンタワー東急ホテル」が開業。地下2階に設けた「能楽堂」も話題を集めた。
渋谷東急文化会館が2003年6月30日、1956年(昭和31年)の開設以来47年の歴史に幕を下ろした。館内最大の映画館「パンテオン」では19時より山下総支配人があいさつした後、名作「サウンド・オブ・ミュージック」を70ミリプリントで上映。最後の上映が終了した22時より、関係者らがエントランス付近に勢ぞろいし、赤く敷き詰められたじゅうたんの上を進み、名残惜しそうに館を後にする招待客を見送った。招待客以外にも同館「最後の日」を一目見ようと詰め掛けた多くのファンらが見守る中、正面玄関のシャッターが下ろされ、23時過ぎには屋外照明も全て消された。
渋谷駅を中心に半径600~700メートルを範囲とする約139ヘクタールが2005年12月6日付けで、都市再生特別措置法に基づく都市再生緊急整備地域に指定された。指定範囲は、「渋谷駅周辺ガイドプラン21」で示した区域をベースにしたもので、「先進的な生活文化等の情報発信拠点の形成」「にぎわいと回遊性のある、安全・安心で歩いて楽しい都市空間の形成」が整備目標に掲げられている。指定により、この地域が既存の都市計画の適用除外となるほか、都市計画提案から6カ月以内に都市計画決定が判断されるなどの都市計画上の特例措置や、民間事業の立ち上がりに対する金融支援や税制上の特例措置などが適用されることで、駅周辺の再開発が促進されることとなった。
渋谷・新宿・池袋を結び、「東京最後の地下鉄」といわれた全長約20キロの新路線「東京メトロ副都心線(13号線)」が2008年6月14日、開業した。建築家、安藤忠雄さんがデザインを担当した新渋谷駅は、ホーム頭上からコンコースまでの駅空間を、直径約80メートルもの楕円ですっぽりと包み込む「地宙船」がテーマのユニークなデザイン。「街の顔である駅が訪れた人の心に残るように」(安藤さん)との思いから、「地中の宇宙船=地宙船」を考案、世界でもまれに見る先鋭的なデザインを採用した。
渋谷駅東口の高層複合施設「渋谷ヒカリエ」が4月26日、開業した。東急が主体となり、都市再生緊急整備地域に指定された渋谷駅周辺地区の再編・再開発を計画する事業のトップバッターとして2009年から工事を進めてきた。地上34階・地下4階で、高さは約180メートル。地下3階部分で副都心線と直結。東急百貨店が運営する「ShinQs(シンクス)」や飲食店フロア、東急シアターオーブ、ヒカリエホールなどとオフィスから成る。高低差を解消するための縦移動動線として初の「アーバンコア」も登場した。
東急東横線渋谷駅が2013年3月16日0時51分の下り最終列車の出発をもって営業を終了した。営業最終日となった15日は、朝から現役最後の姿を記録しようと多くの人が駅に詰めかけた。下り最終列車となった元住吉行きは0時44分発を予定していたが、自由が丘駅で非常ベルが鳴らされたため、7分遅れて51分に渋谷駅を発車。鉄道ファンなどから「ありがとう」の声が上がる中、代官山方面へ姿を消した。
東急東横線渋谷駅の営業終了を受け、3月15日最終電車後の下り回送列車通過後、渋谷駅~代官山駅間の地下切替工事が行われた。工事は15日最終列車から16日始発までの3時間半。工事区間は渋谷一号踏切から代官山駅ホームの273メートルで、協力会社を含め総勢約1200人が動員された。
地下5階の新しい東急東横線渋谷駅で3月16日、相互直通運転の発車式が行われた。式には東急電鉄・野本弘文社長、東京メトロ・奥義光社長、横浜高速鉄道・池田輝政社長、西武鉄道・若林久社長、東武鉄道・根津嘉澄社長、東急電鉄・廣田博美渋谷駅統括駅長が出席。鉄道ファンとして知られる向谷実さんが作曲した駅メロ「Departing from New Shibuya Terminal」が流れた後、テープカットを行い、5時発の始発列車、各駅停車元町・中華街行きが4分ほど遅れて発車した。
東急百貨店東横店東館が2013年3月31日、閉館した。1934(昭和9)年、渋谷駅と直結するターミナルデパートとして開業。当初は東館のみで、1954(昭和29)年に西館、1970(昭和45)年に南館をそれぞれ増築し3館体制となった。4月以降は東館の施設・売り場を移設・集約し営業を継続する。
渋谷マークシティ地下1階に2013年4月4日、「東横のれん街」が移転オープンした。1951(昭和26)年10月、老舗を集めた日本初の「名店街」として東急百貨店東横店・東館に開業。同館閉館に伴い、かねての場所での営業を3月31日に終了した。渋谷マークシティ地下1階に移転することで、東急東横店地下1階の「東急フードショー」と通路を挟んでつながり、コンセプトが異なる大型デパ地下空間が誕生した。
東急プラザ渋谷が2015年3月22日、道玄坂エリア一帯の再開発に伴い閉館した。1965(昭和40)年6月13日に複合ビル「渋谷東急ビル」として開業。1973(昭和48)年に「渋谷東急プラザ」に、2012年に現在の「東急プラザ 渋谷」に、それぞれ名称を変更した。開業当時から営業する紀伊國屋書店やロシア料理店「渋谷ロゴスキー」をはじめ、生鮮食品売り場「丸鮮渋谷市場」、40代以上の女性向けのアパレルショップなど約90店が営業していた。
代官山駅近くの商業施設「LOG ROAD DAIKANYAMA(ログロード代官山)」が6月29日、グランドオープンした。かつて渋谷と代官山を結んでいた東急東横線の線路跡地を活用した商業施設として4月に第1弾がオープン。敷地は全長220メートルにわたり、コテージ風の低層の建物5棟と散策路で構成。1号棟には、キリンビールが新たに立ち上げたクラフトビールのブルワリーを併設するダイニング「SPRING VALLEY BREWERY TOKYO(スプリングバレーブルワリー東京)」が出店。
JR渋谷駅で進む改良工事の本体工事が9月に始まった。渋谷駅周辺で進む再開発に合わせて改良を行うため、2014年4月から作業ヤードの整備など準備工事を進めてきた。工事では、現在内回り・外回りの2面に分かれている山手線のホームを改築し1面2線化。同ホームから現在約350メートル駅南側に離れている埼京線・湘南新宿ラインのホームを移設し並列化することで、乗り換えの利便性向上を図る。1階北側と中央部に自由通路も整備する予定で、駅施設は段階的に整備・共用し、全体の完成は2027年度を予定する。
渋谷・キャットストリート沿いに4月28日、複合施設「渋谷キャスト」が開業した。事業主は渋谷宮下町リアルティ(東急電鉄・大成建設・サッポロ不動産開発・東急建設)。渋谷と原宿をつなぐキャットストリート(Cat Street)に隣接していることと「配役」「役を割り当てる」を意味する「Cast」から命名した同施設。地下2階~地上16階建て、高さ約71メートル。クリエーター専用のシェアオフィス「co-lab」を核に、サービスアパートメント、ベイクルーズ本社が移転を控えるオフィスエリアなどで構成する。
渋谷駅周辺の大規模再開発の目玉の一つとなる高層複合施設「渋谷ストリーム(SHIBUYA STREAM)」が9月13日、開業した。地上35階・地下4階、高さ約180メートルの建物には、中層階に「エクセルホテル東急」が入るほか、上層部のオフィスにはグーグル日本法人が移転。隣接する別棟には「渋谷ストリームホール」も開設。併せて、再生された渋谷川に沿い整備された遊歩道、広場などの公共空間の供用が始まり、渋谷駅南エリアに新たな「まち」が誕生した。約600メートルにわたって整備された遊歩道の先には同日、複合施設「渋谷ブリッジ」も開業。
東急東横線渋谷駅~代官山駅間の線路跡地の施設「渋谷ブリッジ(SHIBUYA BRIDGE)」が9月13日、第1弾オープンする。同日には「渋谷ストリーム」も開業し、区が整備する渋谷川沿いの遊歩道を動線に渋谷-代官山エリア間の回遊性を高めることで、新たな人の流れを生み出す。相直運転に伴い使われなくなった線路の跡地を活用する形で、開発が進む同所。区道を挟む2つの敷地に2棟の建物を建設。第1弾オープンするのはB棟のホテルと、店舗・オフィスの一部。1階~7階は同施設をプロデュースする「THINK GREEN PRODUCE」が初めて手掛けるホテル「MUSTARD HOTEL」が入る。
桜丘の大規模再開発エリアの解体工事が年明けに始まるのを前に、老舗立ち飲み居酒屋「富士屋本店」が10月30日で閉店し、40年を超える歴史に幕を閉じた。昭和の面影を残す店内には客が所狭しと立ち、隣り合わせた初対面同士の間にも自然に会話が生まれる――そんな人情味のある立ち飲みの「聖地」には世代を問わずファンも多く、この日は閉店前から200人近くが列を作り、最後まで行列が途切れなかった。
JR渋谷駅の中央改札と埼京線・湘南新宿ラインのホーム(以下、埼京線ホーム)をつなぐ連絡通路が11月30日に廃止され、12月1日に新たな仮連絡通路の供用が始まった。山手線ホームとの並列化に向け、2020年春の完成をめどに移設工事が進む埼京線ホーム。ホーム階に新たに開通した仮連絡通路は、3・4番線ホームからそのまま中央改札方面に伸びるもので、電車とホームの間には柵や壁を設け、ホームと旧連絡通路の階段などの昇降設備は全て封鎖された。
東急不動産や地権者らが参画する「渋谷駅桜丘口地区市街地再開発組合」が2019年1月、渋谷・桜丘の大規模再開発エリアの解体工事に着手した。渋谷駅南西部に広がる2.6ヘクタールの敷地で進む「渋谷駅桜丘口地区第一種市街地再開発事業」では、A街区(地上39階・地下4階=事務所・店舗・起業支援施設・駐車場など)、B街区(地上29階・地下2階=住宅・事務所・店舗・サービスアパートメント・駐車場など)、C街区(地上4階=教会など)の3棟を建設する。
JR・東急・東京メトロ各線の改札口が地上3階~地下3階にあり乗り換えが大変だった渋谷駅の東口で1月20日、立体的歩行者動線「アーバンコア」の供用が始まり、縦移動の不便が大幅に解消された。開業を目指して建設工事が進められている「渋谷スクランブルスクエア東棟」の低層部と地下部分の一部を使って縦方向の動線を集約するともに、渋谷駅と渋谷ヒカリエ方面を東西に結ぶ横方向の移動を円滑にする役割を担う。
渋谷駅周辺の大規模再開発と並行して架け替え工事が進められてきた「渋谷駅東口歩道橋」の未開通だった一部通路が3月15日に開通し、「ロの字」形通路の全ての供用が始まった。国道246号線と明治通りが交わる交差点に架かる渋谷駅東口歩道橋。従来の対角線部分を伴った歩道橋は、幅員をこれまでの1.5倍以上に広げ新たなロの字形に。橋は渋谷ストリーム、渋谷スクランブルスクエア東棟とも直結し、これまで幹線道路で駅周辺のにぎわいから分断されてきた駅街区~駅南エリア間の主要な動線の役割も担っている。
渋谷駅直上に開業する超高層複合施設「渋谷スクランブルスクエア」東棟が11月1日、開業する。東急、JR東日本、東京メトロが共同で開発している同施設。駅直上に3棟を建設する大規模プロジェクト「渋谷スクランブルスクエア」の第1期で、渋谷エリア最高となる高さ約230メートル、地上47階・地下7階の超高層ビル。14階・45階~屋上に展望施設「SHIBUYA SKY(渋谷スカイ)」を設けるほか、17階~45階にオフィス、15階に産業交流施設「SHIBUYA QWS(渋谷キューズ)」が入り、商業施設は地下2階~14階を占める。
渋谷駅東口の地下に新たに整備される「渋谷駅東口地下広場」が11月1日、渋谷スクランブルスクエアの開業に合わせて一部供用を始め、複合カフェやパウダールーム付きの公衆トイレなどがオープンする。広場は東口バスターミナルの地下部分に位置し、広場内には東京都と渋谷区、渋谷駅前エリアマネジメントの公民連携でカフェや案内所、公衆トイレなどを開設。渋谷エリマネが事業主体となり、区が作成した都市再生整備計画による道路占用の特例を活用した。情報発信や観光案内機能を備える「UPLIGHT CAFE(アップライトカフェ)」は観光案内の場として、店内のデジタルサイネージや展示スペースで「ヒト」「モノ」「コト」にスポットを当てた情報やカルチャーを発信する。
渋谷駅西口の旧「東急プラザ渋谷」跡などで再開発工事が進められている「渋谷フクラス」内に復活する新生「東急プラザ渋谷」の開業日が12月5日に決まり、テナント全69店の概要も明らかになった。1965(昭和40)年に開業した「渋谷東急ビル」を前身とする東急プラザ渋谷。東急グループなどが進める渋谷駅周辺再開発のプロジェクトの一つとして、建て替えのため2015(平成27)年3月に閉館し、跡地や隣接する街区で一体的に建設工事が進められてきた。東急プラザ渋谷は地上18階(建築基準法上は19階)・地下4階建ての施設のうち、2階~8階と最上階層の17階~18階の商業ゾーンに出店。40~60代を中心とした「都会派の成熟した大人」をターゲットに据える。
2016(平成30)年から建て替えのため一時閉店していた「渋谷PARCO(パルコ)」(渋谷区宇田川町)が11月22日、開業する。旧渋谷パルコ・パート1、パート3跡と周辺街区を含む再開発事業として建て替える新生「渋谷パルコ」。地下3階~地上19階で、延べ床面積は約6万4000平方メートル。商業フロアは地下1階~地上9階、10階の一部が商業空間、9階は育成施設・クリエーティブスタジオなど、10階の一部と12階~18階はオフィス空間となる。
移設工事が進む東京メトロ銀座線渋谷駅新駅舎の供用が2020年1月3日、始まる。渋谷駅の大規模な基盤整備に合わせ、1938(昭和13)年の開業以来の大規模な改修工事を進めている。ホームは2009(平成21)年1月に着工し、現在の相対式から1面2線の島式に変更すると同時に、表参道駅方向に約130メートル移動し明治通りの上に新設。ホームの幅は約6メートルから約12メートルに拡幅。同時にトイレや、エレベーター・エスカレーターも整備し、他社線との乗り換えの利便性を向上させる。
駅周辺で進む再開発に合わせて、乗換の利便性向上、駅構内の混雑緩和、バリアフリーなどを目的に改良工事を進めているJR渋谷駅。工事では、現在内回り・外回りの2面に分かれている山手線のホームを改築し1面2線化(ホーム幅員最大16メートル)。ホームから現在約350メートル駅南側に離れている埼京線・湘南新宿ラインのホーム(同最大12メートル)を移設し並列化することで、乗り換えの利便性向上を図る。併せて混雑緩和、他社線との乗り換え導線の改善を図り、1階・3階で駅構内コンコースを拡充。両階と山手・埼京線各ホームを結ぶエレベーターを整備しバリアフリーを強化する。
東急百貨店が、1934(昭和9)年に開業した「東急東横店」(渋谷2)の営業を2020年3月31日で終了し、西館・南館を閉館する。2019年7月22日に発表した。東急百貨店は、渋谷駅直上に11月1日に開業する「渋谷スクランブルスクエア東棟」に計5フロアの売り場を新設することを明らかにしており、ビューティーフロアを中心に西館・南館に出店しているブランドと重複している店も多く、東横店の閉店時期は「未定」としていた。
三井不動産が事業者となり渋谷区立宮下公園の再整備が進む。明治通りに沿って南北方向に伸びる3階建ての施設の屋上部分に設ける公園と、その下に位置する商業施設・駐車場を一体的に整備し、フットサル・バスケットコート、クライミングウオール、スケート場やカフェなどを設けるほか、北側には17階建て200室程度のホテルも併設。完成は2020年3月を予定。施設構成は1階~3階=ブランド・飲食店など、地下2階~地上1階=駐車場(約360台)。公園に緑の天蓋(てんがい)を設け緑陰空間を確保するほか、バリアフリー環境も整備。施設全体を区の一時退避場所に指定し、約6000人を収容。帰宅困難者約4000人が受け入れ可能になる予定。30年間の定期借地権を設定し、事業終了後は更地返還される。