東急東横線・旧渋谷駅地上駅舎と代官山駅までの高架線解体工事に伴い、かつて旧渋谷駅と代官山駅の中間地点に存在した「並木橋駅」(渋谷区渋谷3付近)の痕跡がまもなく消え去ろうとしている。
1927(昭和2)年8月28日、東京横浜電鉄(現東急電鉄)が渋谷と神奈川間をつなぐ全長約23.9キロの新路線「東横線」が誕生。と同時に並木橋駅は、渋谷駅から約500メートルの地点、渋谷川沿いに相対式2面2線のホームを持つ高架駅として開業。駅周辺に青山学院や実践女学園、常盤松女学院、國學院など数多くの学校が集積し、通学利用者でにぎわったという。
その後、同駅は1945(昭和20)年5月24日・25日の空襲で全焼し営業休止。戦争が終わった翌年5月31日に正式に廃止された。
実際の営業期間は約18年と短かったが、今日まで68年間にわたって東横線の高架橋にその痕跡を残し続けてきた。現在ホームそのものは残っていないが、並木橋から渋谷方面に向かって高架橋を見上げた辺りにコンクリートが一段高く突き出した部分が見られ、辛うじてホーム側壁の残痕を感じ取ることができる。
明治通り側から並木橋を渡り切った高架下の上方には、ホームへ上る階段入り口付近に表示されていたであろう「のりば案内」らしき文字も。「の 櫻 横 多」と読める文字は、おそらく「のりば 櫻木町 横濱 多摩川園前 方面」と書かれていたと推察される。その手前には、空襲を逃れ今なお立ち続けている木の電柱も見られるなど、同エリアは時が止まったような雰囲気を漂わせている。
既に旧渋谷駅地上駅舎のかまぼこ屋根や、新並木橋交差点の頭上を走っていた高架橋などの解体工事は済んでおり、高架橋全体が解体・撤去される日も迫っている。今後、旧渋谷駅ホームと線路跡地には2017年度の開業を目指し、「渋谷駅南街区プロジェクト」として33階建ての高層複合施設が建設される。