恵比寿ガーデンプレイス(渋谷区恵比寿4)に3月28日、ミニシアター「YEBISU GARDEN CINEMA」がオープンする。同施設を運営するサッポロ不動産(同)とユナイテッド・シネマ(品川区)の共同運営。
同施設では1994年の開業以来、ミニシアター「恵比寿ガーデンシネマ」が営業していたが、運営会社の角川シネプレックスの撤退に伴い2011年に休館。以降、Kポップアーティスト専用劇場「KTHEATERTOKYO」(昨年末契約満了)として活用していたが、同施設が昨年10月に開業20周年を迎えたことを期にミニシアターを復活させることを決めた。「YEBISU GARDEN CINEMA」では「新しい文化芸術の情報発信」を図り、映像を切り口とした「&CINEMA~五感で、街と一緒に、新しい映画館の楽しみ方を見つけよう~」をコンセプトに掲げる。
ユナイテッド・シネマ調べによると、ミニシアターのピークは2007年~2008年で、そのほとんどが渋谷エリアでの増館によるものだという。「一時は飽和状態となり、作品のクオリティーが維持できず客足が遠のいていた」(サッポロ不動産マーケティング部の三谷真治さん)という。渋谷エリアでも、ミニシアターは近年減少の一途をたどり、ピーク時の26館から現在は12館にまで減少した。そうした中、「ミニシアター発のヒット作品も増えている」ことから、「良質な作品選定をすることで支持を得られる」と判断した。
床面積は、スクリーン1(スクリーンサイズ=最大8.3メートル×4.4メートル)=218平方メートル、スクリーン2(同7.6×3.4メートル)=130平方メートル、ロビーほか=592平方メートルで、合わせて940平方メートル。美術館や博物館をイメージしたという館内には、直径2.5メートルの時計、特徴的な形の照明などを設置する。館内壁面やトイレ、女性用パウダールームには「往年の映画スター」たちの写真を掲出するなどしている。オンラインチケッティングに加え、ロビーには現金とカード決済に対応する自動発券機を3台設置した。
座席数は、スクリーン1=187席、スクリーン2=約93席。カップホルダー付き「ワイドシート」を採用し、前列とかぶらないよう千鳥に席を配置。スクリーン1には専用荷物置きを備えた「プライベートシート」も7席用意する。映写機は最大23メートル幅のスクリーンに対応する4Kプロジェクターで、デジタル3Dシステムを導入。音響設備は7.1チャンネルサウンドを搭載している。
同館では、劇場内に飲食物を持ち込めるようになった。カフェ「&CAFE」では、伊コーヒー豆「ラバッツァ」を使ったコーヒーやエビスビールなどのアルコールを用意する。フードは、季節でフレーバーを変えるオリーブポップコーン(380円)、ミニカップケーキ(350円)などをそろえるほか、「ジョエル・ロブション」とコラボレーションした同館限定のボックス(2,000円または2,200円)も作成した。客単価は1,000円ほどを見込む。
単館ファン、20代後半以降を中心に幅広い層をターゲットに据える同館では、旧来のアート系作品や社会派ドキュメンタリーの上映を引き続き行うほか、ミュージカルや演劇、バレエなどのODS(映画以外のデジタル作品上映)コンテンツなど幅広いジャンルの作品も意識することで、映画を起点に「さまざまな要素が有機的に結びついていく新しい形の映画館」を目指すという。
オープニングを飾る作品は、ジャン=マルク・ヴァレ監督作品「カフェ・ド・フロール」。同日からは、オープンを記念した特集上映「ガーデンシネマが愛した、監督たち。作品たち。」も展開する。
同施設開業20周年を迎えるにあたり、「今後10年・20年支持していただくためにはどうしたらよいか」を検討する中で、さまざまな人から「シネマの復活を求める声が多かった」と話すサッポロ不動産・生駒俊行社長。2011年の時も「時期が来れば再開したいという思いを持っていた」ことから、閉館ではなく休館というかたちを選んだことを振り返り、「災い転じて福となるではないが、閉館という方向にしなくてよかった」と話す。
初年度動員数は15万人を目指す。