東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転のため85年の歴史に幕を閉じた東横線旧渋谷駅の営業終了から半年となる9月15日、東横線をテーマにしたインストゥルメントアルバム「トレイン」が発売される。
コンセプト型音楽チーム「ゴッホの休日」が制作した同作。同チームは、ギターなどを担当する「たなかけいすけ」さんが主宰し、昨年10月に発足。「日常を五感で表現しながら新しい音楽のかたちを探る」活動に取り組む。作品ごとにメンバー編成が変わるのが特徴。
同チーム初の音源作品となる同作は、横浜生まれ・育ち、現在は日吉駅を利用するなど東横線を「ずっと使っている」たなかさんが、旧渋谷駅が無くなることを知り、「感慨深くなり、何か作品として残したい」と同チーム発足時から制作を進めてきた。アルバムでは渋谷から横浜までの急行列車の風景や思い出、乗りながら感じた思いなどを表現。同作にはギターやベース、ピアノ、ドラム、「ギターをたたいたり、かんだりした」パフォーマーの6人が参加した。
作品全体のイメージは駅が無くなる前の最後の春。「曲ごとではなく、アルバム全曲で一つの物語になっている作品」を目指した。渋谷駅からの発車を表現した「bell」から始まり、たなかさん自身が好きだという多摩川の「電車の揺れる感じ、光の感じ」から居眠りしている赤ちゃんをイメージした「sheep」(4曲目)、「まもなく終点」という朗読が入った「e.p」(=end point)までの8曲を、同区間の急行所要時分である30分で収めた。実際に乗車し発車すると同時に聴き始めると「bell」終了後には中目黒に、5曲目「limited」終了時には日吉に、それぞれ到着するように合わせたという。
「説明的になるし、聴いてくれている人のイメージが制限されてしまう」(たなかさん)と、7曲をインストゥルメンタルにした。楽曲には扉の開閉音、「次は○○駅」「お忘れものが無いようにお気を付けください」など駅のアナウンスなど、駅で録音した音を随所に取り入れた。唯一歌が入っている「なんとなく」(8曲目)は同チーム結成前に、たなかさんとドラムの「いのうえまさたか」さんが電車をテーマに作った曲だという。
完成後、東横線に渋谷から横浜まで乗りながら聴いてみて「イメージ通りにでき、ポイントごとにグッとくるところもあった」と振り返るたなかさん。「僕が乗っている東横線のイメージを作品に残した、半分自己満足の作品。外に向けての音楽というよりはパーソナルに向けた音楽。分からない方には分かってもらえないのかもしれない」としながらも、「それぞれで思い入れのある電車で聴いてもらっても共感できる部分はあるかもしれない」と話す。「最初から最後までつながっているので、全部聴いてもらって思い思いに感じ取ってもらえたら」と呼び掛ける。たなかさんは旧渋谷駅の営業最終日の3月15日は渋谷駅に足を運び、最終列車を見送ったという。
ジャケット写真は、たなかさんの友人が描き下ろした東横線の列車のイラストを採用。価格は1,575円。全国のタワーレコードなどで販売する。