渋谷・宇田川町の「アップリンクファクトリー」(渋谷区宇田川町)で1月21日、NYパンクの代表的ミュージシャンのパティ・スミスさんが来日記者会見を開いた。
1946年シカゴ生まれのスミスさんは1971年に詩人としてデビューし、1975年にパティ・スミス・グループを結成しアルバム「ホーセズ」をリリース。たぐいまれな音楽性、怒りを表現した詩、独自のパフォーマンスで知られるNYパンクの代表的ミュージシャン。2005年にフランス文化省から芸術文化勲章受章、2007年にはロックの殿堂に選出されている。昨年8月、8年ぶりとなるオリジナルアルバム「バンガ」国内版を発売した。
今回の来日は、昨年12月に発売された自著「ジャスト・キッズ」、詩集「無垢(むく)の予兆」(ともに発行=アップリンク、発売=河出書房新社)のプロモーション、今月22日の仙台公演を皮切りに全国8カ所を回るツアーのため。同ツアーは10年ぶりの単独ツアーとなる。
「ジャスト・キッズ」はNYを舞台に、写真家ロバート・メイプルソープとの出会いから別れまでの20年をつづった1冊で、スミスさんの「道探し」や経済観、悩みなどに触れていることから、「不況の中悩んでいる人が多いであろう、若い世代の人に読んでほしい」という。1980年代~2007年に書かれた28編を収録した「無垢の予兆」は、亡き夫フレッド・スミスや弟妹たちなど「愛する者」に向けた詩が収められている。タイトルは詩人ウィリアム・ブレイクの詩からとった。
「バンガ」の中には「fuji-san(フジ・サン)」という楽曲が収録されている。日本に向けられた1曲で、「山であり自然の象徴である富士山に、(日本の人たちを)『見守っていてください』という願いを込めた曲」(パティさん)。ツアーに関しては「訪れたことのない場所を含め、全体的に回りたいと思った。仙台はメンバー全員がプレイしたいと思っていた場所」とも。
中でも広島には「個人的な思いがある」と話したパティさん。第二次世界大戦に米兵として参加していたパティさんの父親は、広島・長崎に原爆が落とされたことに心を痛めていたという。幼少のころからその話を聞いていたパティさんは「いつの日か訪れて『ごめんなさい』と言いたい、祈りをささげたいと思っていた」と胸の内を明かした。
その後、バンドメンバーのギタリスト、レニー・ケイさんを招き楽曲を披露。自身の長女に向けた楽曲で、毎回全ての子どもたちに向けて歌っているという「Wing」、パティさんが叙情詩として書いたものに、ロックバンドMC5のギタリストであったフレッドが作曲を手掛けた「People Have The Power」の2曲を歌い上げた。
同ツアー東京での公演は、今月23日SHIBUYA-AX(神南2)、同24日オーチャードホール(道玄坂2)の2公演。チケット料金は7,000円。