ワタリウム美術館(渋谷区神宮前3、TEL 03-3402-3001)で11月17日、「建てない」建築家・坂口恭平さんの「新政府展」が始まった。
坂口さんは1978(昭和53)年熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業後、2004年に日本の路上生活者の住居を収めた写真集「0円ハウス」(リトルモア)を刊行。2008年、隅田川に住む路上生活の達人・鈴木さんの生活を記録した「TOKYO 0円ハウス 0円生活」(大和書房・河出文庫)を刊行し、翌2009年には自身も実際に多摩川生活を経験した。東日本大震災後には、「新政府」を樹立し「初代内閣総理大臣」に就任。故郷の熊本市に移住し避難者を受け入れる「ゼロセンター」を開設した。
「過去編」「未来編」の2部構成で展開する同展。現在展開している「過去編」では、これまでに描いたドローイングや写真映像などを展示。2階には、9歳の時に自身の学習机を使い作った家「テント」、坂口さんの初の建築作品で車輪付きの家「モバイルハウス」などが並ぶ。3階は、メモやスケッチを貼り付けた引き戸や扉などを展示するほか、4階では、「新政府」発足への思考の流れや「未来編」の構想などを、壁にじかに書いた文章や写真で紹介。中には、広島県・尾道市で公開制作した作品や、ベルリンやバンクーバーで個展を開いた際の作品なども並ぶ。「未来編」では、坂口さんが構想する新通貨「平(ヘイ)」など、「新政府」の構想と活動を紹介する予定。
初日には坂口さんと、同館キュレーター和多利浩一さんがトークイベントを開催。同展開催のきっかけについてまず、震災後、坂口さんのように東京を離れ「(震災に)クールに接する」アーティスト、6人組アート集団「Chim↑Pom(チン↑ポム)」など被災地に足を運んだアーティスト、東京に残りデモなどの活動をしたアーティストの3タイプがいることを説明。同館では今年4月~7月にかけ、チン↑ポムがキュレーションした展覧会を開いているが、当初から坂口さんの展覧会も「セット」として開催を構想していたことを振り返った。
「敷居が高い場所だと思っていた」ことから、同館に入ったことがなかったという坂口さん。これまでに手掛けた作品を展示することに対し「恥ずかしいと思っていたが、今日見てみたらいい絵だと感じた」とし、「ツイッターでも連動させるので(併せて)見てほしい」と話した。今夏CDを発売した坂口さんは、最後にギターを弾きながら歌声を披露した。
開館時間は11時~19時(水曜は21時まで)。月曜、12月31日~1月3日は休館(12月3日・10日・17日・24日・1月14日は開館)。入館料(会期中何度も入場可能なパスポート制チケット)は、大人=1,000円、学生(25歳以下)=800円ほか。「過去編」は12月7日まで、「未来編」は12月8日~2013年2月3日。