渋谷・桜丘町のミニシアター「シアターN渋谷」(渋谷区桜丘町)が12月2日、閉館する。運営する日本出版販売(以下「日販」、千代田区)が9月20日、発表した。
日販は、「メディアミックスによって書店店頭の活性化が図られる」という判断の下、1991年に映像出資事業に参入し、2003年からは映像制作事業も開始。2005年12月3日、旧「ユーロスペース」の施設を買い取り、同館をオープンした。面積は2シアター合わせて約97坪で、客席数は75席と102席。オープニングは、香港映画「ブレイキング・ニュース」だった。
2005年には、映画「ホテル・ルワンダ」が国内公開されないことがネット上で話題となり、ミクシィで公開を求めるコミュニティーが立ち上がり、最終的に4595人の署名が集まった。これを受け、翌2006年1月に同館で日本初公開された。
オープンから現在に至るまで、洋画・邦画を問わず特色ある作品を上映してきた同館。しかし、7年の間に渋谷のミニシアターを取り巻く環境が大きく変わり、映画業界に押し寄せたデジタル化の波への対応にも迫られている。「デジタル化への設備投資等を検討し、前向きに事業継続への道を模索してきた」という同館だったが、ここ数年の市況の厳しさも背景に、同社では「中期的な展望を見出すことが難しく、残念ながら事業撤退の決定に至った」としている。
渋谷周辺はかつて、ミニシアターの集積エリアとして知られ、最盛期は20館近くあったが、これまでに8館(恵比寿ガーデンシネマ、ヒューマントラストシネマ文化村通り、シネセゾン渋谷、シネフロント、シネマ・アンジェリカ、渋谷シネ・ラ・セット、渋谷シアターTSUTAYA、ライズX)が姿を消している。
クロージング作品は、ロバート・アルドリッチ監督の「カリフォルニア・ドールズ」(ニュープリント版)と「合衆国最後の日」、パスカル・ロジェ監督のホラー最新作「トールマン」、サバイバル・シチュエーション・スリラー作品「ヘッドハント」(レイトショー)の4作品。11月3日から上映する。
閉館後については現在、事業の譲渡先を模索しているという。