渋谷の名画座「シネマヴェーラ渋谷」(渋谷区円山町、TEL 03-3461-7703)で3月17日から、1900年代前半のサイレント映画を特集上映する「映画史上の名作IV サイレント小特集」が開催される。
サイレント映画「アーティスト」が2月に発表されたアカデミー賞で作品賞や監督賞、主演男優賞など5部門を受賞し、サイレント映画に注目が集まる中での特集となる今回。期間中、1900年代前半に製作された20本を紹介する。
作品は、新聞社社主の妻でありながら数々の男たちと関係を持ち、ついには息子までをとりこにしてしまった踊り子の流転の物語「パンドラの箱」(G・W・パブスト監督、1929年)、北ドイツの田舎町にやって来た精神科医・ガリガリ博士が村人たちの死を次々と予言していくホラー作品「ガリガリ博士」(ロベルト・ヴィーネ監督、1920年)、石器時代・ローマ時代・現代の3つの時代でライバルを蹴落とし恋人を得ようと奮闘するキートンの物語「キートンの恋愛三世代記」(バスター・キートン監督、エドワード・クライン監督、1923年)、気まぐれで大金を寄付した大富豪の男が、一目ぼれした牧師の娘のために伝道活動にまい進するスラップスティック・コメディー「ロイドの福の神」(サム・テイラー監督、1926年)、ザクセン公国の王子と留学先の下宿屋の娘の恋を描く「思ひ出」(エルンスト・ルビッチ監督、1927年)など。
そのほか米D.W.グリフィス監督の短編集「断念」(1909年)、「戦闘」(1911年)、「ニューヨークの帽子」(1912年)、アメリカの「喜劇王」ハロルド・ロイドの短編集「ロイドのスケート」(アルフレッド.J.グールディング監督、1919年)、「ロイドの神出鬼没」(ハル・ローチ監督、1920年)、「ロイドの落胆無用」(フレッド・C・ニューメイヤー監督、1921年)などもラインアップする。
1920年代まではフィルムに音を録音する技術はまだ発明されておらず、全てがサイレント映画だった。しかし、「およそ100年前の映画にもかかわらず、時代を超えて現代の観客をも楽しませる力を持っている」と同館スタッフの井上奈緒さん。
アカデミー賞で5部門を獲得した「アーティスト」(ミシェル・アザナヴィシウス監督)の公開を4月に控え、「『アーティスト』公開前の本特集で、たくさんの方々にサイレント映画に触れていただければ。音の助けを借りない視覚のみの芸術であるサイレント映画には、表情としぐさだけで感情を表現する役者の演技力と確かな演出が必要。初めてご覧になった方は、その豊かな映像表現に驚くのでは」とも。
期間中、上映は2本立て(入れ替え無し)。料金は、一般=1,400円、会員・シニア=1,000円ほか。作品は16ミリフィルムで上映し、一部作品は日本語字幕なしでの上映となる。今月30日まで。