代官山ヒルサイドテラス(渋谷区猿楽町)に現在、ミニラジオ局「HILLSIDE FM」が限定で開設されている。
代官山の街並みに期間限定でパブリックアートを設置する公募展「代官山インスタレーション2011」の一環で展開する同企画。今年は、154点のプランが寄せられた中から9点が入選し、制作・展示されている。「HILLSIDE FM」は今年のグランプリ作品。
「HILLSIDE FM」は東京大学で都市研究を行っている横山美和さんが企画・発案。研究対象地域の一つである代官山について、「『地域ブランド(地域価値)』を考え、地域の活性化と情報化に資するコミュニティー・デザインのあり方を全国でも先駆けて行っている」地域と分析し、都心の地域で、実験的にラジオ放送局を立ち上げることで「現代社会が今抱える問題に立ち向かう」ことを試みるインスタレーション作品として展開しているという。
横山さん自身が以前、民放各社でラジオ番組制作に携わる仕事をしていたことや、東日本大震災発生後、被災地で被災者自らが臨時災害FM局を立ち上げている姿を目の当たりにし、「自分にできることは何か」と考え、臨時ラジオ放送局を立ち上げた。横山さんをはじめ、ディレクターやアナウンサーなど「プロ」の番組制作者や俳優、編集者、ライターなどで構成するラジオ班、武蔵野美術大学「ヨコヤマゼミ」の学生たちで構成する空間デザイン班で運営する。
放送局を設ける同施設F棟のガラス面約20メートルには電波をイメージしたカッティングシートを貼るほか、スタジオ内には丘をイメージした長机を設置。放送スタジオのほか、代官山に店を構える店舗のDMやチラシなどを設置・配布する「まちづくり情報スペース」も用意する。
番組は、MC自らが代官山の中で毎回異なる場所に出向き、風景などを紹介する「クルトゥラーレ」や、「代官山ヒルサイドテラス物語」(前田礼さん著)の一部を朗読することで街の歴史を紹介する「ヒストリーオブライフ」、代官山に携わるゲストを呼んでトークを展開する「プライムオブライフ」、文学・芸術・建築・エンターテインメントなどさまざまなジャンルのクリエーターやアーティストが日替わりでパーソナリティーを務める「トワイライトヒルズ」、賛同企業であるアクサムの南山宏之社長や「デザインノート」三嶋康次郎編集長がパーソナリティーを務める「代官山ライナーノーツ」など。平日14時35分には「シブヤ経済新聞」の記事1本を読み、MCが感想を述べるコーナーも。
代官山の魅力について、横山さんは「代官山は商業地帯と住宅地が入り組んだ地域で、実は緑がとても多いのが特徴。子連れの若いお母さんから年配の方まで、とても気さくな方が多く、皆さん代官山を愛していらっしゃる」と話す。「おしゃれな建物や文化を発信するイメージが強かったが、実際に現地にいると、そういうイメージよりも『まち』なんだなぁ、というような発見が多かった。他地域に比べて、まちづくりに関しては、みんなで考えて良くしようと解決していく姿勢が強く感じられた」とも。
周波数は88.8Mhz。放送時間は11時~19時。今月30日まで。