広島原爆記念日である8月6日より、円山町のシネマ・マルチプレックス「KINOHAUS(キノハウス)」(渋谷区円山町)内の2劇場で、原爆と原発を描いた作品が公開される。
3階のミニシアター「ユーロスペース」(TEL 03-3461-0212)では、福島第一原発を追ったドキュメンタリー「あしたが消える-どうして原発?-」をモーニングショー公開。同作は1989年に作成された55分の短編作品。同年はソ連でチェルノブイリ原発事故が起こった3年後で、完成当時はテレビ放送や「大がかりな」劇場公開ではなく、地域のホール上映のみだった。原発問題が再熱している昨今、新たにデジタルリマスター版として公開が決まった。
福島第一原発の定期検査などの指導的な立場で働いていた父を骨ガン(骨腫瘍)で亡くした仙台市の主婦が投稿した新聞記事をきっかけに、同作企画者のプロデューサー平形則安さんらが製作。被ばく労働者や実際に福島第一原発4号機の設計に携わり、現在サイエンスライターとして活動する田中三彦さんの証言などで構成する。
「22年前、日本で原発の大事故が起こらないことを願ってこの映画を作ったので、正直、今回上映されることには複雑な思いがある。『あしたが消える』というタイトルも、大事故が起きて『毎日が当たり前にやってくる明日が消えてしまわないように』との思いでつけたので、今回の事故でふる里に追われ事故前の日常が消えてしまった方々のことを考えると、何の力にもなれなかった無力感と現状に対する悔しさでいっぱい」と、平形さんは現在の心境を明かす。上映は毎朝10時30分から1回のみ。上映終了日は,未定。
2階の「オーディトリウム渋谷」(TEL 03-6809-0538)では、漫画「はだしのゲン」の作者・中沢啓治さんを追ったドキュメンタリー「はだしのゲンが見たヒロシマ」(石田優子監督)を公開。6歳の時に被爆した中沢さんの生い立ちから被爆体験、被爆者差別もあり「原爆」から逃げていたが、母の死をきっかけに「自分にできることは何なのか」を考え、原爆をテーマにした漫画第一作目「黒い雨にうたれて」を描き上げたこと。そして、自らの体験を「ゲン」に託して描いた「はだしのゲン」についてなど、広島市内の思い出の土地を巡りながらその半生を語っている。上映は毎朝10時30分から1回のみ。今月26日まで。期間中、石田監督のトークや中沢さんとインターネット中継によるトークなどのイベントも開く。
同劇場では6日、被爆した教育学者・長田新が編さんした文集「原爆の子~広島の少年少女のうったえ」(1951年、岩波書店)を映画化した「ひろしま」(1953年、故・関川秀雄監督)をロードショー公開する(今月26日まで)ほか、原爆を体験していない青年2人が、「ヒロシマ」「ナガサキ」をたどる旅を描いたドキュメンタリー「ヒロシマ・ナガサキ ダウンロード」をレイトショー公開。同作は、南北米大陸へ渡った被爆者を過去5年間収録し続けている竹田信平監督初の長編ドキュメンタリー作品。上映日程は6日と10日~13日。7日からは、広島・長崎への原爆投下から1982(昭和57)年の映画製作当時までの新聞記事のスクラップから「原子力」をテーマに企画したドキュメンタリー「原発切抜帖」(1982年、故・土本典昭監督)の上映も始まる。今月26日まで。