渋谷・Bunkamura「ル・シネマ」(渋谷区道玄坂2、TEL 03-3477-9264)で現在、没後20年を迎える仏アーティスト、セルジュ・ゲンスブールの生涯を描いた「ゲンスブールと女たち」(原題=GAINSBOURG、Vie erique)が公開されている。配給はクロックワークス。
1928年、パリでリシュアン・ギンズブルグとして産声を上げたセルジュ・ゲンスブール。両親はユダヤ人。バーのピアノ弾きとして働きながら美術学校に通っていたが音楽の道で生きていくことを決意。最初の妻エリザベットと結婚すると同時に作曲も始め、キャバレー「ミロール・ラルスイユ」でピアニスト兼歌手として働き始める。1955年、セルジュ・ゲンスブールと名乗るようになる。1958年にデビューアルバム「第一面目のシャンソン」を発表し、1960年、映画「唇によだれ」のテーマ曲(共作)がヒット。他のアーティストへの楽曲提供も多く手掛け、1965年「夢見るシャンソン人形」(フランス・ギャル)などがある。
ゲンスブールはハンサムとは言えない風貌ながらも、仏・女優のブリジット・バルドーさんや英・女優のジェーン・バーキンさんなど多くの女性たちに愛された「だて男」。1991年3月、心臓発作で急逝。同作ではその「破天荒でセンセーショナル」な生涯、「伝説」をシャンソンやジャズ、フレンチ・ポップで彩りながら描いた。
監督・脚本を手掛けた仏コミック作家のジョアン・スファールさんは1971年、ニース生まれ。高校卒業後ニース大学で哲学を専攻する傍ら、有名なコミックアーティストたちに自作を売り込み、1994年に初の自著を出版。これまでに、個人や共作などで150以上の漫画・小説・アニメ映画などの作品を手掛け、仏ロックバンド「ディオニソス」のビデオクリップは2006年、アヌシー国際アニメーション映画祭で賞を受賞したほか、同年「The Rabbi’s Cat」で「漫画界のアカデミー賞」と呼ばれるアイズナー賞も受賞。先月、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの小説をコミック化した「星の王子さま バンドテシネ版」(サンクチュアリ出版)が出版された。「ゲンスブールと女たち」が初の長編監督作品となる。
「彼の人生にとても忠実なものではあるが、伝記映画ではない。これは本物の物語なのだ。劇中ではパリもロンドンも登場人物のようなもの。ゲンスブールの足跡をたどる中で、僕らはあらゆる類いの隠れ家やアンダーグラウンドの世界を発見することになった」と振り返り、「僕はこの作品を、ゲンスブールに親しみがない海外の観客に向けたものにしたいと思っていた。今作を体験する人は、ベールを脱いだ非凡な運命だけでなく、モダンな原型をも目撃すべきである」とスファールさん。
同館と新宿バルト9ほかで全国ロードショー。