円山町のミニシアター「ユーロスペース」(渋谷区円山町、TEL 03-3461-0212)で現在、性同一性障害の現代アーティスト・ピュ~ぴるさんの8年間を追ったドキュメンタリー「ピュ~ぴる」が公開されている。
10代のころに独学で洋裁を始め、コスチュームを制作していたピュ~ぴるさん。1997年ごろからは裁縫やニッティングを繰り返し作り上げる「造形キャラクター」の表現を手掛けるようになる。それらのコスチュームを自身で身に着け「キャラクターになりきる」パフォーマンスを行い、作品はNYのカルチャー誌「ペーパー・マガジン」やイタリア版「VOGUE」などにも掲載された。2003年にはギャラリー「GALLERY SPEAK FOR」(猿楽町)で個展「PLANETARIA」を行ったほか、2005年には現代アートの国際展「横浜トリエンナーレ」に参加するなどしている。
同作では、男性として生を受けたものの自身の体に違和感を覚えていたピュ~ぴるさんが、自ら制作したコスチュームでクラブに通っていた2001年から、性同一性障害に対する葛藤や失恋、去勢手術などを含む2008年までの8年間の姿を追ったドキュメンタリー。
メガホンを取ったのは20歳ごろからピュ~ぴるさんと友人という松永大司監督。1974(昭和49)年生まれで、大学卒業後は俳優として「ウォーターボーイズ」(矢口史靖監督、2001年)や「手錠」(サトウトシキ監督、2002年)などに出演。監督として「ハッピーフライト」(矢口史靖監督、2008年)や「蛇にピアス」(蜷川幸雄監督、2008年)のメーキング、ミュージックビデオなどを手掛けてきた。本格的な劇場公開デビュー作となる同作は、ロッテルダム国際映画祭、パリ映画祭などの映画祭から招待を受けている。
「ある日、ピュ~ぴるから『自分の生きざまを撮ってほしい』と言われ、友人から借りたカメラで撮影。当時、ピュ~ぴる自身、現代アーティストになりたいと思っていたわけでもなく、自分も映画監督になりたいとも思っていなかった」と松永監督。「初めての撮影から1年くらいがたち、何となく撮影していたものが、ある時から、これをしっかり撮影して映画にしたいという気持ちが芽生えてきた。そこには、ピュ~ぴるの作っているものがアートとして見られるようになり、自分も演じることよりも映画を作りたいという気持ちが出てきたことが大きかった」と振り返る。
鑑賞料は、一般=1,700円、大学生・専門学校生=1,400円ほか。同館には募金箱を設置し義援金を呼び掛けている。募金した来場客にはピュ~ぴるさんのポートレートシリーズ作品「光へ向かう少女」のポストカードを進呈。今月2日・6日・9日にはピュ~ぴるさんや松永監督らが登壇するトークショーを行うほか、松永監督の短編「おとこのこ」の併映も決定。詳細は同館公式ホームページで確認できる。