渋谷「Bunkamuraオーチャードホール」(渋谷区道玄坂2)で3月16日、米歌手シンディ・ローパーさんの公演「シンディ・ローパー メンフィス・ブルース ジャパン ツアー 2011」の東京公演が始まった。
2月23日に発売したアルバム「MEMPHIS BLUES」を記念した同ツアーは、シンディさんの約2年半ぶりのジャパンツアーとして注目され、名古屋公演(15日)を皮切りに東京(16~18日)、大阪(21日・22日)の3都市で開催を予定。東日本大震災に見舞われた11日に来日したシンディさんは一時公演中止も検討したが、自身の強い思いもあり、協議を重ね開催を決めた。
13日には「ちょうど飛行機に乗っていたので何が起こっているのか分かりませんでした。空港やホテルで毛布をかぶった人たちがいて心が痛みました。でも、いま私は日本にいるんだから、何ができるか考えています。私にできることは音楽。少しでも勇気を、元気を与えることができるなら、それが私の仕事と思っています。日本はRISING SUNの国。自分たちを信じて立ち上がりましょう。ガンバッテ!」とコメントしている。
東京公演初日となった16日、ステージに立ったシンディさんは「日本の皆さん、大変でしたね。頑張っている日本人を見て、いつも元気をもらいます」と哀悼の意を表し、「あまり日本語がしゃべれない」としながらも「ゲンキ」「アリガトウ」などと日本語で話したほか、「日本人はとても強い人だと信じている。今直面している事件を乗り越えると思う。力はここ(胸を指して)とここ(頭を指して)にあるのを忘れないでください。その二つが人間の一番すてきなもの。私もこれを忘れないように頑張ります」と被災者に向けてエールを送った。
この日、「Just Your Fool」「Don’t Wanna Cry」「Early in the Mornin’」などのアルバム収録曲のほか、「癒やしの1曲。一緒に歌いましょう」と告げ歌った「TRUE COLORS」など16曲を披露。来場客は手拍子をしながら体を揺らし、シンディさんの歌声に耳を傾けた。シンディさんは全身を大きく動かしながら歌い、時折ステージから客席に降りて歌う姿も見られた。東京公演のみのゲストとして、「日本唯一」のボーカリスト&フリューゲルホーン奏者で、「Don’t Wanna Cry」にも参加したTOKUさんもステージに立った。
当日は計画停電などで運休する鉄道路線も多い中で、ほぼ満席に近い約1,700人のファンが会場を埋め尽くした。立川市から電車を乗り継ぎ来場したという来栖亜也子さん(38)は「(ニュースなどを見て)へこんでいたが、まだまだできることがあるのではと思えた」と話したほか、一緒に訪れた中野区在住の荻津真美さん(32)は、「(公演を)やらないのでは思っていたが、歌手は歌で伝えるものだと思うから、彼女しかできないことだと思った」とし、「最後の曲は、一人でも多くの方が助かればと思いながら聞いていた」と振り返った。家族や親戚が茨城県にいるという荻津さんは「日曜日に連絡が取れ、みんなの無事が確認できた。今日も水戸で余震があり、(ライブに)来てよいのかと迷ったが、来て良かった」とも。
会場には義援金箱も用意。スタッフらが被災者への支援を呼びかけ、多くの人がその思いに応えていた。同ツアーの残りの公演はいずれも当日券が用意されている。チケットはキョードー東京などで販売中。