円山町のミニシアター・コンプレックス「Q-AXビル」(渋谷区円山町)が3月4日、「映画美学校」の移転に伴いシネマ・マルチプレックス「KINOHAUS(キノハウス)としてリニューアルオープンした。
2006年1月に開業した同ビルには、ビル完成と同時に地下1階、2階に2スクリーンを構える劇場「Q-AXシアター」をオープン。3階には「ユーロスペース」(桜丘町から移転)、4階には渋谷初の名画座「シネマヴェーラ渋谷」が入る「ミニシアター」複合施設として話題を集めた。Q-AXシアターは2008年4月、同館の運営会社が親会社でTSUTAYAグループ傘下のレントラックジャパンと合併したことに伴い「渋谷シアターTSUTAYA」に名称を変更。運営もカルチュア・コンビニエンス・クラブ(恵比寿南3)が手掛けていた。
今回、京橋地区の再開発に伴い移転を決めた映画・映像作りを実践的に指導する教育機関「映画美学校」が地下1階~2階に入居する。名称はドイツ語で「映画の館」の意味。映画関連のNPO、シアター、学校と映画を軸にした各施設が入居することから命名した。
264席を備えていた地下1階の劇場跡には、70席の試写室や教室、MAスタジオを新たに設けた。同所では、スタディスト(勉強家)の岸野雄一さん、音楽家・文筆家などで活動する菊地成孔さんの音楽美学講座も開く。
1階は、カフェ「cafe theo(テオ)」(TEL 0357842427、テラス席含め40席)と小舞台付きの教室を展開。間仕切りをなくすことで、パーティーやレセプションなどにも利用できる(約100人収容可)。カフェのメニューは全てテークアウト可能で、コーヒーを中心としたソフトドリンクやブリオッシュ、サラダ、スープなど。生ビールやカクテルなどワンコイン(500円)のアルコール類も(カフェは同9日グランドオープン)。
2階には、劇場(商興場)「AUDITORIUM(オーディトリウム)shibuya」がオープン。席数は136席で、映画祭や特集上映、講演、完成披露試写会、記者会見などに対応。「ユーロスペース」「シネマヴェーラ渋谷」は引き続き営業を続ける。
渋谷周辺エリアのミニシアターの閉館・休館が相次いでいることについて「インターネットでの映像メディアが発達するうえで、映画館離れが進むのは当然だと思うが、映画が持っているパワーは衰えていない。(当校には)それを伝えていく使命があると考えている」と映画美学校代表理事の松本正道さん。「文化が混在している渋谷は文化的に元気な街であってほしい。ささやかではあるが文化的な雑踏を作っていきたい」とし、「近隣には多くのライブハウスやBunkamuraがあり、受け手の方が創作側に立つ時には入りやすいのでは」と話す。