テーマパーク「養老天命反転地」(岐阜県養老郡)などを手がけた芸術家で建築家、故・荒川修作さんのドキュメンタリー映画「死なない子供、荒川修作」が12月18日から、シアター・イメージフォーラム(渋谷区渋谷2、TEL 03-5766-0114)でモーニング&レイトショー上映される。
1936(昭和11)年愛知県出身の荒川さんは、1961年ニューヨークに拠点を移し、翌年から妻で詩人のマドリン・キンズさんと本格的な活動を開始する。構想期間30年という「肉体を再認知させる」ためのテーマパーク「養老天命反転地」(1995年)や「養老のような空間で日常生活を営めるように」と建造した「三鷹天命反転住宅~In Memory f Helen Keller~」(2005年、三鷹市)、ニューヨークの「バイオスクリーブ・ハウス」(2008年)などを手がけ、今年5月ニューヨークの病院で亡くなった。
同作では、「人間は死なない」など荒川さんの生前の言葉をはじめ、宇宙物理学者・佐治晴夫さんのインタビュー、「三鷹天命反転住宅」で生活する人たちの身体的変化や、同住宅で生まれ育った子どもの記録映像などを織り交ぜながら、荒川さんの全活動を振り返る。ナレーションは俳優の浅野忠信さんが務めるほか、音楽家の渋谷慶一郎さんが音楽を手がけた。
メガホンを取ったのは、同住宅の住人でもある山岡信貴さん。1965年生まれの山岡さんは、1993年に初めて演出を手がけた長編映画「PICKLED PUNK」がベルリン映画祭などの映画祭に招待されたほか、2000年公開の「PIG'S INFERNO」などすべての製作作業をひとりで行なうスタイルを貫きながら作品を発表し続けてきた。映画のほか、テレビ番組や外国映画の買い付けなども手がける。
山岡さんは「荒川さんからは(三鷹店名反転住宅での)日々の暮らしのレポートが欲しいといわれていたが、文字を書いて(=文書)の報告が十分にできていなかった。いわゆる『住宅』ではなく、荒川さんの言う『生命』についての実験室のようなものだと実感し、真剣に記録に残す必要があると思い始めた。(撮影した映像を)荒川さんに見せるつもりで編集し始めたが、もっと多くの人に荒川さんを知ってもらう必要があると思い映画として発表した」とし、「(荒川さんに)映画の感想を聞いてみたい。会えなくなってしまったのは完成の2週間ほど前だったから」とコメントしている。
17日には、公開記念イベントとして渋谷さんの即興演奏を交え、荒川さんが手がけた長編映画「Why not」を12年ぶりに公開するほか、初日の18日には山岡監督と本間桃世さんを招いたトークショーも開催。
上映時間は11時15分~・21時~。当日一般1,800円、学生1,300円ほか。