恵比寿のアート拠点「NADiff A/P/A/R/T(ナディッフ・アパート)」(渋谷区恵比寿1)3階に9月25日、六本木のギャラリー&カフェ「TRAUMARIS(トラウマリス)」が移転・リニューアルオープンした。
トラウマリスは2003年、六本木・芋洗坂のギャラリーコンプレックスビルにオープンしたバーが前身。アートジャーナリストなどを務めていた住吉智恵さん、精神科医で現代美術コレクターの岡田聡さん、ギャラリー「hiromiyoshii」オーナーディレクターの吉井仁実さんの3人が共同運営。小説家やパフォーマー、ミュージシャン、アーティストなどのアートシーンを中心としたクリエーターが数多く集まったことで知られ、ジャンルを横断したイベント企画も好評を博してきた。
2008年、ビル取り壊しによる同拠点「解散」後は、トラウマリス名義で住吉さんが各所でイベントを展開。今回、「共にアート業界を盛り上げてきた時代の仲間」だというNADiffが運営するナディッフ・アパートに空きがでたことから、住吉さんがプロデューサーとなり、アートキュレーション会社とフロアをシェアすることで再出店にこぎ着けた。
「(六本木のころのような)本格的なバーは今のアートシーンの気分ではない。芸術と、飲食と、コミュニケーションを同等の扱いにすることで、アートやバーに対する敷居の高さを押し下げ、日常のシーンへと近づけたい」と住吉さん。展示のための白い壁とシンプルなカウンターを設けた店内では、「長年、銀座で店を開いていた」母親からレシピを譲り受けたオリジナル料理も提供する。
現在は、紙・壁・防波堤などをキャンバスに「一筆書き」による繊細なパターン描写で制作を続ける美術家・小川敦生さんの新作展「Miroir」を開催。会場内にはマスキング剤と鉛筆を使って描いた壁画2種と、鏡に線描を掘り込んだ作品を展示している。「壁画は最終日には消えてしまう」(住吉さん)とも。
来月15日には、パフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」を主宰する小説家の戌井昭人さんと、タイの気鋭漫画家タムさんとの弾き語り企画「ギター禅問答」も開催。企画した住吉さんは「この作家とこの作家を結びつけたら面白い、という気持ちで企画している。『マッチングの妙』を見てほしい」。
再出店の理由については、「この不景気に(新たに)始めようと思ったのは、アーティストのため。スタープレーヤー以外にも、たくさんいるアーティストたちの『発表の場』の提供を、損得勘定抜きで誰かがやらなければいけないと思った」とし、「さまざまな表現が生まれる場にしていきたい」と話す。
営業時間は15時~23時。展示鑑賞のみの入場も可能。日曜・祝日は休業(イベントにより不定)。