気に入ったアート作品を、貨幣を媒介せずに「何か」と直接交換することを提案するアート見本市「ART FAIR FREE」が4月2日・3日の2日間、原宿の展示・イベントスペース「VACANT(バカント)」(渋谷区神宮前3、TEL 03-6459-2962)で開催されている。
京都でギャラリー「0000(オーフォー) Gallery」を運営する緑川雄太郎さんら4人のアーティストがディレクションを、会場を運営する「NO IDEA」がアートディレクションを、新宅梓さん(「MAGIC ROOM???」スタッフ)がコーディネートを、それぞれ担当する。
同フェアの仕組みは、来場者がある作品を欲しいと思った場合、交換条件として自身が提供できる「何か」を作家に提示し、作家がそれを気に入ったら作品との交換が成立するもの。「何か」については、「米10キロ」「1日デート」「個展開催の権利」「勇気」「一生応援する約束」などの「参考例」を挙げながら、「作家の心を揺さぶる提案を待っている」という。参加アーティストはバンド「ボアダムス」でも活躍するヤマタカEYEさんや、現在森美術館で作品が展示される宇治野宗輝さんなど56人だが、展示中は各作品の作者名を明かさない。
緑川さんは「日本のアートシーンでは、欧米の成熟したアート市場とは仕組みや環境が異なる」と話し、「市場価値」「ネームバリュー」を排した今回の見本市を通して、「もっと身近な日本オリジナルのアート市場を作り上げる試み」として「アートになじみのない若い人にも作品を手にする楽しみを知ってもらうこと」をもくろむ。
参加アーティストは「周りにいた面白い人たちに『一本釣り』でお願いした」。アーティストらに趣旨を説明する過程では、「彼らにも(アート市場の現状に対し)焦燥感があるのを感じた」(新宅さん)という。パフォーマンスやインスタレーションなどの「売りにくい作品」も「前に出るチャンスにしてもらいたい」とも。
初日は既にエントリーした来場者も見られたという。「お目当てのアーティストの作品がどれかを探す人」もいるといい、総じて「作品の前に立って長い時間考えてくれる人が多く、うれしい」(新宅さん)。同フェアについては、「繰り返して初めて『実を結ぶ』試み。どうすればこれからも続けられるのかを考えながら、今後もできるだけ長く継続できれば」と話す。
開催時間は12時~21時。入場料は1,000円。4月4日は2日間の来場者を対象に、作品交換の「結果発表」を行うパーティーを開き、Ustream(ユーストリーム)での中継も予定する(17時開場、18時開演)。