岡本太郎記念館(港区南青山6、TEL 03-3406-0801)で2月3日、第12回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)で「岡本太郎賞」を受賞した現代アーティスト若木くるみさんの最新作「お面」のライブパフォーマンスが始まった。
1985(昭和60)年北海道生まれの若木さんは、2008年に京都市立大学美術学部を卒業し、版画作品を中心に活動するアーティスト。大学3年生のころから、「苦手な人とのコミュニケーションを克服すること」や、「見る側、作る側に分かれてしまう美術館の展示だけではつまらない」という思いからライブパフォーマンスを開始。大学を卒業した2008年、友人からの後押しを受け、若手アーティストの登竜門として知られる公募展「TARO賞」に初挑戦し、見事に最高賞を受賞した。
若木さんは「えらいこっちゃなって感じで、とてもうれしかった」と振り返る。昨年行われた川崎市岡本太郎美術館(神奈川県川崎市)での受賞展では、約9メートル×2メートルの巨大な1万円札を模写した透かしの中で、深くそり上げた若木さんの後頭部をキャンバスにして来場者が自らの「自画像」を描き、さらに若木さんは、自身の後頭部に触れる筆使いを感じイメージしながら来場者の「顔」を描くという型破りなパフォーマンスで会場を沸かせた。約2カ月間の展示期間中に約700人の「顔」を描き上げたという。
岡本太郎記念館では2月28日まで、岡本太郎が描いた「いきもの」のデッサンや油彩など約30点を集めた企画展「いきもの」を開催している。展示作品について、若木さんは「いきものの目玉がぱっくりと見開かれて、その中に自分が映っている。さらにその目の穴から、太郎さんがこちらを見ているような不思議な感覚になる」とコメント。同展の特別展示となる「お面」では、こうした太郎の「目玉」に影響を受け、前作の後頭部でのパフォーマンスを封印した。
会場では、岡本太郎の写真を基に自ら制作したという樹脂製マスクをかぶった若木さんが、ハーフミラー越しに観客と向き合う形で立つ。ミラーに映る観客の「顔」と、若木さん扮(ふん)する岡本太郎の「顔」、さらに会場内に展示される岡本作品のいきものの「顔」がシンクロし、そこから刺激され浮かび上がるイメージをマスク(自らの顔)の上に絵の具で塗リ上げていくパフォーマンスを展開する。
「受賞するまで、太郎さんのことをほとんど知らなかった」という若木さんは「お客さんに飽きられるのが怖くて、必死なんです」とライブの心境を明かす。「日ごろ、自分の顔が付いていることを意識する人は少ないと思う。今回の作品を通して、『顔って、一体何だろう?』と考えてもらい、改めて自分と向き合ってほしい。ぜひ会場で味わって…」。
開館時間は10時~18時(入館は17時30分まで)。入場料は、一般=600円、小学生=300円。火曜休館(祝日の場合は開館)。特別展の開催は今月8日まで。