恵比寿のアート拠点「NADiff A/P/A/R/T(ナディッフ・アパート)」(渋谷区恵比寿1)3階・4階が今年1月よりオルタナティブスペース「MAGIC ROOM???」(TEL 03-6408-9255)と称し、アートの可能性を広げる「実験」イベントを続々と展開している。
2008年のナディッフ・アパート開館以来、精神科医で現代美術コレクターの岡田聡さんがオーナーを務めるギャラリー「magical,ART ROOM」(3階)、喫茶&スナック「MAGIC ROOM??」(4階)として運営してきた2フロア。4階カフェは、昨年の1周年に合せてオルタナティブスペースと称して内装を黒から白へとリニューアルし、3階ギャラリーは今年1月にディレクター伊藤悠さんが独立したのを期に閉廊。併せて4階は「?」を一つ増やし「MAGIC ROOM???」へと名称変更を行い、3階空きスペースを利用しながらこれまで4階だけではできなかった「拡大版」イベント企画を展開している。
企画を進めるのは、1985年東京都生まれの新宅(しんたく)梓さん。新宅さんは、大学で西洋美術史を学びながら岡田さんに師事。在学中からギャラリースタッフを務め、卒業後もライブやパフォーマンスイベントなどを手がけてきた。「もともと美術の歴史を学んできたが、卒論に取り組む中で、『文献にあたって作家の意図などを読み解く』というスタイルに違和感を抱くようになった。目の前に生きた作家がいて、聞きたいことにすぐに答えてもらえたり、作家の変化を目の当たりにしたりすることができる現代アートに興味が沸いた」と新宅さん。
「現代アートの『リアルな体感』を伝えたい」という思いでこれまで手がけたイベントは、アートをテーマにした川柳を公募して大賞を決めた「アート川柳」(1月8日)、4階をホストクラブに見立て、アーティストがホスト役を務めた「HOST CLUB MAGIC ROOM???」(同10日)、3階を蛍光塗料でライブ・ペイントした「BLACK MAGIC?」(同22日~24日)など。多い日で100人以上を集客したという。
現在、3階では京都にギャラリー「0000(オーフォー)」をオープンする緑川雄太郎さんら4人のアーティストが、「声を展示」するインスタレーション「Waiting for voice ヴォイスを待ちながら」を開催(今月3日まで、13時~19時)し、4階では参加アーティストの「声以外の作品」を展示(同7日まで)している。5日~7日には、コンテンポラリーダンスの振付家菅尾なぎささんが演出する「人間展示」企画「クリウィムちゃん展卵会」を開催予定。一連のイベントは、3階の契約期間が満了を迎える今月14日まで続くという。
3階クローズ後も、4階を「飲食スペースというよりは文化発信の場にしていきたい。アーティスト同士、お客さん、アート関係者らが意見交換を行う『アジト』になれば」と新宅さん。「ゆくゆくはアートの発信地として『HOTEL』を作りたいというのが岡田の思い」としながら、同スペースを「アートイベントの『実験の場』として可能性を模索しながら、より大きな場所でテンポラリーに展開できるようになれば」と意気込む。
4階の営業時間は、カフェ営業=14時~19時、バー営業=20時~28時(イベントの場合はイレギュラー)。