ディズニーの最大のライバルと言われたフライシャー兄弟による幻の長編アニメ「バッタ君町に行く」(1941年)が12月19日より、渋谷のミニシアター「シネマ・アンジェリカ」(渋谷区道玄坂1、TEL 03-5459-0581)でリバイバル公開される。配給は三鷹の森ジブリ美術館。
マックス・フライシャー&デイブ・フライシャー兄弟によるフライシャー社は、米アニメ―ションが黄金期を迎えた1930年代から40年代にかけてディズニー最大の対抗馬として知られた。同社は人の動きを写し取る「ロトスコープ」などの手法を開発して音楽短編映画や教育アニメを制作。また都会的・大衆的な作風を持ち味に「ベティ・ブープ」「ポパイ」など、人気アニメ・キャラクターを生み出してきた。
1937年、フライシャー社はディズニーの長編アニメ「白雪姫」公開をきっかけに長編制作に着手。しかし1941年に公開した「バッタ君 町に行く」が真珠湾攻撃の直後に公開され興業が振るわず、兄弟はスタジオを去り、同社は事実上閉鎖となった。
悲運の名作アニメーションとして今日でも根強いファンを持つ同作は、人間の足下の世界を舞台に都会の真ん中に暮らす虫たちが、安全な土地を求めて大移動する様子を追ったコメディー。音楽が随所に効果的に使われていることでも知られ、ホーギー・カーマイケルさんやリー・ハーラインさんらの書き下ろしによる挿入曲も見どころの一つとされる。
同作公開に向けて、スタジオジブリの宮崎駿監督は「アニメーターをやるやつは見ておくべき。時代のせいで面白くないものと、時代を超えて面白いものがあるはずで、その時代を超えるものをやっぱりフライシャーは持っている」とコメントを寄せている。
シネマ・アンジェリカほか全国で順次ロードショー公開。