渋谷で「アートの課題」展-若手作家が制作過程公開、その可能性を議論

ヴァルタン・アヴァキアンさんによるQRコードの作品。携帯電話で読み込むとレバノンの詩人の言葉を読むことができる

ヴァルタン・アヴァキアンさんによるQRコードの作品。携帯電話で読み込むとレバノンの詩人の言葉を読むことができる

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 トーキョーワンダーサイト(以下、TWS)渋谷(渋谷区神南1、TEL 03-3463-0603)で企画展「アートの課題」開催初日の11月21日、出品アーティストらが現代アートの問題・可能性などを議論する公開対談を行った。

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 グローバル化や多様化が進む社会・地域における「新たな共同」のあり方をテーマに、3人の若手アーティスト、ベトナム生まれのディン・Q・リーさん、レバノン生まれのヴァルタン・アヴァキアンさん、沖縄生まれの照屋勇賢さんが参加。各自が制作過程のアート作品を展示する会場にラウンドテーブルを設け、TWS青山での滞在制作を通して生まれた課題や問題意識について意見を交わした。

 ホーチミンを拠点に戦争や移民問題を扱う作品を手掛けるリーさんは、「百里(ひゃくり)平和稲荷」と題して、茨城県小美玉市にある航空自衛隊百里基地への反対運動を取材。運動の一環として、騒音の激しい基地に隣接した私有地での生活を続ける住民の声を通して、日本の自衛隊問題に迫った。「土地にへばりついて政治的な活動を続ける人々が、(思想家などではなく)農民である、という点に興味を持った」(リーさん)。

 レバノンでネオンサインや雑誌などのポップ・メディアに焦点を当てた制作活動を続けるアヴァキアンさんは、映像上映に加え、「QRコード」を使って携帯電話にメッセージを表示させる作品を発表。ラウンドテーブルでは、自身の経験から報道メディアなどでの情報コントロールの実体を伝えながら「QRコードの見えているイメージと、URLなど見えない情報との違いを伝えたかった」と、制作理由を明かした。

 NYを拠点に、現代社会の諸問題をテーマにした緻密(ちみつ)な作品が国内外で高く評価される照屋さんは、段ボールの底に、水たまりに流れる小舟を追った映像を投影する作品を出品。ラウンドテーブルでは「5週間前から滞在制作を始めたが、現在もどんな作品にするべきか模索している段階。作品をまとめられないことを申し訳なく思っているが、一方で『自分は何を制作したいのか』ではなく展覧会のスケジュールを追いかけている自分の思考に疑問をもつようにもなってきた」と明かし、アーティストとギャラリーの関係について問題提起した。

 そのほかテーブルには、作曲家の高橋悠治さん、東京芸術大学先端芸術表現科の木幡和枝教授も参加し、作品の感想や「アーティスト(作曲家)として生き延びるポイント」などについて話し合った。

 同展は、TWSとドイツ文化センターが共催して2007年から毎年開催。近年の多文化社会に向けて、アート作品の役割、アーティストやキュレーター、アート業界の問題点・可能性などを、若手アーティストらの制作活動を通して検討するもの。関連イベントとして、海外で活躍するキュレーターや舞台監督を招き、参加アーティストと一緒に新しいキュレーションのあり方を模索するワークショップも開催(12月4日~ 6日、同18日~20日)する。現在の展示作品は「制作過程」として出品されており、今後随時更新されていく予定。

 開催時間は11時~19時。月曜、12月28日~1月4日は休館。入場無料。来年1月17日まで。

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