徹底した取材によるドキュメンタリー写真で世界的に知られるモノクロ写真家セバスチャン・サルガドさんの企画展「アフリカ 生きとし生けるものの世界へ」が10月24日、東京都写真美術館(恵比寿ガーデンプレイス内、TEL 03-3280-0099)で始まった。
サルガドさんは1944年ブラジルに生まれ、サンパウロ大学で経営学を学んだ後、軍事政権下の祖国を逃れてフランスに移住。パリ大学で博士課程を修了後、エコノミストとして国際コーヒー機関に就職。その後写真家に転身すると、1986年~96年に23カ国を取材して各地で働く民衆を撮影した「WORKERS(労働者たち)」、1994年~99年に43カ国を訪れ、戦争、紛争、飢餓などの理由で生まれた土地を離れて暮らす人々を記録した「MIGRATION(移民たち)」を発表。経済学を基盤にした徹底的な取材に裏打ちされる作品群は、緻密(ちみつ)さと美しさを兼ね備えた希有な報道写真として国際的に高い評価を受ける。
同展では、サルガドさんが1970年代後半から現在までの30年間に撮り続けたアフリカの写真100点を通して、「見捨てられた大陸」と呼ばれる同地を多角的に紹介。何万人もの難民の姿をとらえた写真群から、エチオピア、スーダン、チャドの干ばつと飢餓、ルワンダの大量虐殺などアフリカ大陸が抱える深刻な問題の数々を明らかにするほか、農業や漁業に従事するアフリカの人々の姿をとらえた写真群では被写体の力強いまなざしが印象的。
また、サルガドさんは2004年から「地球環境と人間社会の関係を再考する」(サルガドさん)プロジェクト「GENESIS(起源)」を開始。会場では、シマウマやヒョウ、ゾウやゴリラなどの生物の日常の瞬間をとらえた近作に加え、「大量虐殺があった場所からそれほど遠くない」(サルガドさん)というルワンダの美しい自然風景も並ぶ。全作を通し、ドキュメンタリー写真でありながら構図や奥行きなど計算され尽くした独特のモノクロ表現にも注目が集まる。
関連イベントとして11月7日、「JICA」(国際協力機構)の小中隆文さんを招き「アフリカのお話」と題したレクチャーを開く(同館アトリエ1、13時45分~)ほか、12月4日にはアフリカの伝統楽器「Nyatiti(ニャティティ)」を使ったライブ演奏(同館1階カフェ、19時~20時)も展開する。
開館時間は10時~18時(木曜・金曜は20時まで、入館は閉館30分前まで)。月曜休館(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)。入場料は、一般=800円、学生=700円ほか。12月13日まで。