赤や黄などの鮮やかな色彩、大胆なタッチで「男女が寄り添う姿」を繰り返し描いた「アール・ブリュット(生の芸術)」作家、アロイーズ・コルバスの日本初の大規模個展が現在、ワタリウム美術館(渋谷区神宮前3、TEL 03-3402-3001)で開催されている。
アロイーズが描いた作品「ボナンファンの豊かなマントの中で」(関連画像)
アロイーズは、1886年にスイスの中産階級に生まれて教師などを務めたが、31歳で統合失調症を発症し、1964年に亡くなるまでの46年間を病院で過ごした。入院当初から周囲に知られることなく創作活動をスタートさせ、使用済みの包み紙や雑誌などをキャンバスに自身の「精神世界」を追求。1947年にジャクリーヌ・ポレ=フォレル医師を通して画家ジャン・デュビュッフェと出会い、アロイーズの作品に「芸術性」を見出したデュビュッフェは、「美術の概念」にとらわれない「自由」な表現を「アール・ブリュット(生の芸術)」と命名した。
赤や黄、オレンジなどの鮮やかなクレヨンや色鉛筆を使い、大胆なタッチで繰り返し描いたのは「男女が寄り添う姿」。同展では、アロイーズの創作活動を年代順に7期に分け、アロイーズ財団の会長でもあるフォレル医師が厳選した作品を一堂に紹介。10メートルを超える絵巻や、世界未公開作品も含めた85作品を並べながら、王冠やマントなどの豪華な装飾をまとった彼らの「官能的な愛の世界」が、晩年へ向けてより鮮やかさ、華麗さを助長させていく様子を伝える。
アール・ブリュットの画家ヘンリー・ダーガーの回顧展を2002年に初めて開いた同館は、「びっくりするほど大きな反響があった」という流れを引き継ぐかたちで同展を開催。今回の反応について、同館広報・森さんは「アロイーズ作品を、この展覧会で初めてご覧になる方がほとんどのようですが、週末は多くの方が来場し、好評」とし、「作品の魅力や、アール・ブリュットへの関心も高く、多彩な切り口から楽しめる展覧会」と話す。
同館1階受け付けでは、図録(3,000円)に加え、アロイーズが使用したスケッチブックを模した画集「アロイーズのスケッチブック」(3,600円)も販売。開館時間は11時~19時(水曜は21時まで)。月曜休館(7月20日は営業)。入館料は一般1,000円ほか。8月16日まで。