古典から現代アート作品まで、世界の「だまし絵」を一堂に展示する大規模企画展「奇想の王国 だまし絵展」が6月13日、渋谷「Bunkamuraザ・ミュージアム」(渋谷区道玄坂2、TEL 03-3477-9413)で始まった。
視覚の「イリュージョン」の働きを積極的に利用して鑑賞者の目をあざむく「だまし絵」効果の系譜は、平面上に奥行きのある空間を表現する「遠近法」として、イタリア・ルネサンス美術から始まる。16~17世紀のヨーロッパでは、遠近法を極端に誇張することで像をゆがめて表現する「アナモルフォーズ」や、迫真的な描写を突き詰め現実とイメージの差異をあいまいにする「トロンプユイル」などが発達し、19世紀アメリカへ輸入されたトロンプユイルは、さらに迫真性を極めた「アメリカン・トロンプユイル」に発展した。
同展では、16~17世紀の古典的作品からシュルレアリストのダリ、ルネ・マグリットらだまし絵効果の系譜を受け継いだ近現代の作家までの作品とともに、浮世絵師・歌川国芳ら機知に富んだ日本の作例も紹介。宮廷画家ジュゼッペ・アルチンボルドの代表作「ウェルトゥムヌス(ルドルフ2世)」(1590年ごろ)も、日本初公開する。
会場では、だまし絵効果がたどった変遷を地域別、時代別に6つのテーマ(章)に分けて紹介する。日本初上陸となる「ウェルトゥムヌス」を描いたアルチンボルドは、ハプスブルク家3代の神聖ローマ皇帝に仕えた宮廷画家。同作ではモモやキャベツ、リンゴなど63種類の植物を描きながら、果樹と果物の神「ウェルトゥムヌス」になぞらえたローマ皇帝ルドルフ2世を表現している。
日本では、江戸時代末期から明治にかけて、複数の人物を組み合わせることで人の顔を表した「寄せ絵」や、通常は織物を使う掛け軸の柄を手描きで表現した「描表装(かきびょうそう)」などが登場し、だまし絵が独自の発展を遂げたとされる。空間から立ち現れる幽霊の迫真性など日本ならではのだまし絵も展示し、西洋作品との違いも紹介する。
「多様なイリュージョニズム」と題した最終章では、現代アート表現に浸透するだまし絵効果を紹介。人物や建造物をミニチュアのように撮る写真家・本城直季さんや、絵画の固定観念を裏切る作風で知られる現代アーティスト福田美蘭さんらの作品が並ぶ。
会期中、地下1階「ドゥ マゴ パリ」では同展をイメージし、夏野菜をモザイク仕立てにした限定メニュー「キッシュと夏野菜のテリーヌモザイク仕立て」(1,575円)を提供。1階ロビーラウンジでも、アルチンボルドの作品を思わせる果物をデザートプレート (コーヒーまたは紅茶付き、1,260円)を提供する。
開館時間は10時~19時(金曜・土曜は21時まで)。入館料は、一般=1,400円、大学・高校生=1,000円、中・小学生=700円。8月16日まで。