精神科に通う患者の素顔に迫ったドキュメンタリー「精神」(想田和弘監督)が6月13日から、シアター・イメージフォーラム(渋谷区渋谷2、TEL 03-5766-0114)で公開される。
映画界でもこれまで「タブー」とされてきた精神科への撮影を敢行した意欲作。舞台となった岡山県の外来精神科診療所「こらーる岡山診療所」では、「患者一人ひとりから撮影の了解を得ること」を条件に撮影を許可。「被写体にモザイクをかけると、偏見やタブーをかえって助長する」(想田監督)との思いから、素顔で映画に出られる患者のみにカメラを向けた。患者のありのままの「人間の姿」に迫り、「正気」と「狂気」の境界線を問い直した。
メガホンを取った想田監督は、1993年からNYを拠点に劇映画やドキュメンタリーを制作。ナレーションや音楽、説明を省略することでメッセージ性を排す独自の「観察映画」で知られる。観察映画第1弾の長編ドキュメンタリー「選挙」(2007年)では、自民党の推薦で市議会議員の補欠候補に出馬した山内和彦さんの選挙運動を「観察」。同作は英BBC、NHKなど約200カ国でテレビ放送され、米放送界のピューリッツア賞と呼ばれる「ピーボディ賞」を受賞している。
公開初日の舞台あいさつでは、同診療所院長で岡山県精神保健福祉センターなどで精神障害者の社会復帰推進活動を行ってきた山本昌知医師とともに登壇する。登壇は10時45分の回の上映後。公開に伴い、渋谷「ライズX(エックス)」(宇田川町、TEL 03-3464-8555)で7月4日から「選挙」をリバイバル上映する。
同作品はシアター・イメージフォーラムで先行ロードショー後、全国順次公開予定。