「真夏の夜の夢」(1959年)のイジー・トルンカ監督やヤン・シュバンクマイエル監督などチェコの人形アニメーションの巨匠らに迫ったドキュメンタリー「チェコ人形アニメの巨匠たち」が12月20日より、渋谷「ユーロスペース」(渋谷区円山町)でレイトショー上映されている。配給はチェコ人アーティストのグッズ販売やギャラリー運営などを手がけるアットアームズ(大阪市)。
高い独創性で知られるチェコの人形アニメは、欧州近隣の大国から母国語を守るメディアとして、社会風刺や体制告発を代弁しながら成長してきた文化的背景を持つ。第二次大戦中、ナチスドイツの支配下で製作された映画に多くの芸術家、アニメーターの才能が利用される中、プロパガンダ的芸術のもと隠されていたスタジオ「AFIT」。
プラハを拠点に活動していたアニメーター、ウラジミール・ノヴォトニーらによって戦前に設立された同スタジオは大戦中に姿を消すものの、才能あるアニメ製作者らが集まるきっかけとなり、その後スタジオは保護領下で資金を獲得、戦後のチェコアニメーションの「基礎」となる作品が完成する。製作者らは映画製作の国有化にも加わり、1945年に国家が解放されわずか1カ月未満で初のカートゥーンスタジオ「トリック・ブラザーズ」を設立、チェコアニメーションの「黄金時代」が幕を開けることになる。
同作では、時代に翻弄(ほんろう)されながらも高い技術と想像力で作品を作り上げてきたチェコのアニメーション作家に迫る。1946年カンヌ映画祭で「動物たちと山賊」がディズニー映画を差し抜いてトリック映画最優秀賞を獲得したイジー・トルンカや現在も活躍する「アリス」(1987年)などのヤン・シュバンクマイエル監督、チェコアニメの精神を受け継ぎながら現代人形アニメ界をけん引するイジー・バルタ監督ら名だたる監督の作品への情熱を追いながら、日本未公開作品の製作場面なども公開する。
劇場では、本編にも登場するブジェチスラフ・ポヤル監督の人形アニメ「りんごのお姫様」(1973年)、イジー・バルタ監督の「ゴーレム」(1996年、パイロット版)も同時上映する。