来街者を待ち受ける商圏や沿線住民の「夢と期待」を乗せ、本日開通――東京メトロは6月14日、埼玉県南部と都心部をつなぐ全長約20キロの新路線「副都心線」を開業した。
埼玉県・和光市から池袋、新宿を経て渋谷に至る同線は、東武東上線、西武池袋・有楽町線とそれぞれ相互直通運転を行うほか、東京メトロの既存各線とも乗り換えが可能になり、埼玉南西部や都内北西部から都心部にかけてのアクセスが飛躍的に向上する。
駅ホームの吹き抜け構造など、都市鉄道ならではの最新鋭の設備も注目される中、開業当日は都内各駅も早朝から多くの鉄道ファンや乗客らでにぎわいを見せた。建築家・安藤忠雄さんがデザインを手がけた渋谷駅では、駅のシャッターが開く早朝4時台に始発を待つ150人以上の行列ができた。
最も長い行列ができた宮益坂下交差点近くの出入り口に開業前日の朝8時から並んだという神奈川県在住の男性会社員は「1番になりたくて並んだ。1番列車に乗りたい」と開門が待ちきれない様子。前日11時から並び2番手となった横浜市在住の40代男性会社員も「物心ついたころから電車が好き」という大の鉄道ファン。「(鉄道は)自分にとってのライフワーク。真新しいトンネルや駅のホーム…乗れるのが楽しみ」と期待をふくらませた。
駅は行列ができたこともあり、予定を20分繰り上げ4時20分ごろ開門。正式な開門を前に、「0001」番を刻印する切符の自販機の数と同じ8人が先に通され、「貴重な」1番切符を手にした。開門とともに行列客が流れ込み、改札付近やホームは一気に人であふれた。カメラを手に、楕円(だえん)形の吹き抜け空間や「地宙船」をイメージした流線型のモニュメントなどを被写体に収める鉄道ファンの姿も多く見られた。
駅ホームには、出発を待つ1番列車「7000系」の車両が待機。「(新型車両の)10000系を臨時で走らせてもらいたかった」(都内在住の男子大学生2人組)と残念がる声も聞かれたが、始発10分前に車内の照明が点灯、列車が動き出す準備を始めると、ホームのあちこちから拍手と歓声がわき上がった。
先頭車両が満員状態となる中、5時5分、多くの乗客を乗せ渋谷駅からの始発列車が無事出発。出発直後には車内でも大きな拍手と歓声が起きた。1番列車に親子3人で乗り込んだ都内在住の主婦は「これから高校生の息子が通学に使う。これまで使ってきたJR沿線駅より学校までが近くなる」とアクセス条件の向上を喜ぶ。
こうしたアクセス条件の改善や既存路線の混雑緩和など多大な効果が見込まれる副都心線。新線開通により、渋谷-池袋間ではエリア間の熾(し)烈な乗客争奪戦も予測されるが、乗客の「大移動」でまち全体の動きが活発化することで、各エリアの集客が相乗効果を生み出すと見る動きもある。
渋谷駅に到着した新型車両「10000系」(関連画像)「副都心線」あす開業-北参道など広域渋谷圏各駅で記念行事ラッシュ(シブヤ経済新聞)新宿三丁目ホームで副都心線開業記念式典-石原都知事など初試乗(新宿経済新聞)副都心線開業で激化するエリア間競争-しなやかな変化を続ける広域渋谷圏、2008年はこう動く(シブヤ経済新聞特集)人が動く、街が動く-開業目前!東京メトロ・副都心線「渋谷駅」の全容と未来(シブヤ経済新聞特集)