フランス革命のさなか、マリー・アントワネットやナポレオン妃ジョゼフィーヌに仕え「バラのラファエロ」と称えられた宮廷画家、ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテの作品を中心に、会場を「バラ」作品で埋め尽くす大規模企画展「薔薇空間 宮廷画家ルドゥーテとバラに魅せられた人々」が5月17日、渋谷Bunkamuraザ・ミュージアム(渋谷区道玄坂2、TEL 03-3477-9413)で始まる。
ボタニカルアート(植物細密画)としての忠実な描写を出発としながらも、花びらの開き方や傾き具合などで花そのものの繊細な表情をとらえるルドゥーテの作品が一堂に会す企画展。ボタニカルアートの金字塔とされる大著「バラ図譜」(Les Roses)の大判フォリオ判を日本初公開するほか、国内外の写真家らによる「バラ」関連作品を合わせて紹介するなど、「バラ」尽くしの展示を行う。
169枚の銅版画から成る「バラ図譜」は、無類のバラ好きとして知られ、生前多くの品種を集めていたとされるナポレオン妃ジョゼフィーヌに、ルドゥーテ自らが提案した「カタログ」的作品。スティップル・エングレービング(点彫刻版法)と呼ばれる繊細な技法でバラ独特の存在感を表した169点の作品の中には、現存しない品種も含まれるといい、植物学上も重要な資料となっている。
8年の歳月をかけて制作された「本」形式のこの図譜を、同展ではすべて額装して展示する。「香り」の演出は、これまで約1,000種類ものバラの香りを調査してきたという元資生堂リサーチセンター香料開発室参与でパフューマリー・ケミスト(香料化学者)の蓬田勝之さんが担当する。
ルドゥーテ作品と並び展示されるのが、水彩画や写真といった別の手法で描かれた国内外の多彩な「バラ」作品。英・風景画家アルフレッド・パーソンズがバラ研究家のエレン・ウィルモットの依頼で制作した著作「バラ属」(The Genus Rosa)に収録されたリトグラフをはじめ、国内ボタニカルアートの草分け的存在、二口善雄の水彩画、写真家・齋門富士男さんの作品を、それぞれ約30点~50点にわたり紹介する。
会場では、ルドゥーテの作品がモチーフになったスカーフやポーチ、陶器などを販売。造花職人・岡田歩さん(Ayumi Okada)のコサージュ作品や人気ブランド「CA4LA」の帽子などの会場限定商品も売り出す。期間中、Bunkamura「ドゥ マゴ パリ」(TEL 03-3477-9124)のオープンテラスにはシーズンのバラを集めた「ローズガーデン」が出現、期間限定の「『薔薇空間』ケーキセット」(1,470円)も登場する。
入館料は、一般=1,300円、大学・高校生=900円、中学・小学生=600円ほか。営業時間は10時~19時(入館は閉館の30分前まで、金曜・土曜は21時まで営業)。6月15日まで。