憲法記念日にあたる5月3日、渋谷シネ・アミューズ(渋谷区道玄坂2、TEL 03-3496-2888)でドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」が全国に先駆けて公開された。
初の一般上映とあってシネ・アミューズには多くの報道陣らが駆け付け、小雨の降る中一時周辺は騒然とした雰囲気に包まれたが、抗議行動などは特になかった。一方、映画を見に来た観客は、早朝から並ぶ約30人が館内の階段に列を作った。9時過ぎには館内ホールが開放され、初回は満席に。以降は列ができることもなくスムーズに会場内へと流れている。
この日の朝6時に訪れたという最前列の笹木さん(18)は今年から早稲田大学に通う大学生。「以前から(映画自体を)気にはしていましたが、前日の新聞広告で公開が明日だということを知り駆け付けた」(同)という。小学生のころから新聞を読んでいたことで政治の世界に興味を持ち、「将来は世界を舞台に政治に関連した仕事に就きたい」と話す。
友人2人と前列に並ぶ中央大学の女子大生(19)も6時ごろに会場に訪れた。大学で「ジャーナリズム」のプログラムに参加している彼女もまた、「戦争やジャーナリズムに興味がある」(同)という。現在、日本刀を造る職人に取材を行っていて、偶然目にした「靖国」のポスターに日本刀の職人らしき人が載っていたことから「興味のあるものが詰まっている映画だ」という思いに駆られ訪れたという。
右翼団体の抗議活動などで一時、上映中止にまで追い込まれた「靖国」は、日本・中国・韓国の3カ国の合作映画で、日本に19年在住する中国人の李纓(リ・イン)監督が靖国神社を舞台に10年にわたる取材を行い制作した。8月15日の終戦記念日に、靖国神社で日本政府に対して台湾や韓国の遺族たちが抗議する姿などを追った記録映像などから日本の歴史を浮き彫りにする。
渋谷シネ・アミューズでの上映は今月9日まで。以降、シネカノン有楽町、第七藝術劇場(大阪府)、広島シネツイン新天地(広島県)など全国で順次ロードショーを予定している。