東急電鉄は4月21日、今年6月の地下鉄副都心線開業に向け、渋谷駅東口で地下工事を進める「新渋谷駅」構内の様子を報道陣に公開した。
新渋谷駅は、副都心線開業後、2012年に同線と相互直通運転を始める東横線の新駅として、6月14日に先行開業する。ホーム中心線を境に、池袋側が東京メトロ、代官山側が東急の管轄となる両社の「共同使用駅」となる。
東急電鉄では東横線直通運転開始に伴い、東口・旧東急文化会館跡地で複合高層ビルの建設を進めており、新渋谷駅を今後グループの「重要な拠点」に位置付け、開発を進めていく方針だ。
世界的建築家、安藤忠雄さんがデザインを担当した新渋谷駅は、ホーム頭上からコンコースまでの駅空間を、直径約80メートルもの楕円ですっぽりと包み込む「地宙船」がテーマのユニークなデザイン。「街の顔である駅が訪れた人の心に残るように」(安藤さん)との思いから、「地中の宇宙船=地宙船」を考案、世界でもまれに見る先鋭的なデザインを採用した。
地宙船の「入り口」は、改札などがある地下2階部分。駅に入るとまず、地下ホームを見下ろせるガラス張りの吹き抜け空間が出現、これが各階に共通する地宙船の「中央」部分となる。その脇から改札を抜け、人々を出迎えるのがドーム状の船の先端部分。ホームや階段、コンコースに至るまで、駅構内には船底や側面部分など丸みを帯びた地宙船の一部が随所に姿を現し、インパクトを与える。
ユニークなデザインと並び、新駅の特徴となるのが、省エネルギーなどで環境に配慮した点。2012年に完成(一部を除く)予定の複合高層ビルとの「境界」に、地上から地下4階に抜ける巨大な空洞を設け、自然の対流現象である上昇する熱気と下降する冷気の仕組みを利用。開口部は、地宙船内部の吹き抜け空間ともゆるやかにつながるため、ホームから発せられる列車の排熱も自然に換気でき、通常地下駅で使うエネルギー量に比べ年間約1,000トンのCO2削減を見込むという。
自然換気システムは、駅構内の冷却にも一役買う。従来の地下駅で必要だった機械による換気が不要になるため、駅では「放射冷房」と呼ばれる新システムを導入。天井や床の内部に配置したチューブやマットに、冷たい水や空気を循環させ、冷却効果を実現。随所にめぐらせた総量280トン以上にも及ぶ地宙船のパーツにも冷たい空気を流し、冷房効果を促すという。
駅ホームは4車線となるが、副都心線開業時に開通するのは両端の2車線。中央吹き抜け部分から見下ろせる中央車線部分には一部仮設のホームを設け、両端のホームをつなぐ。中央車線の開通は、東横線が乗り入れる2012年以降を予定。
地下鉄副都心線は6月14日に開業。
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